トルココーヒー
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UCC「コーヒーストーリー大賞」
ボスニアヘルツェゴビナで飲んだ一杯のトルココーヒーの味を今でも覚えている。
もう、10年くらい前になるだろうか。
ちょうど、内戦が終わってセルビアが空爆される直前の夏だった。
まだ内戦の爪痕の残るモスタルという町へバスで着いた時、
うさんくさい爺さんが宿は決まっているのか、
今日は宿は取れないからうちのペンションに泊まらんかとドイツ語で話しかけてくる。
何となく信用ならない感じだったので、
その場は適当にやり過ごしてバスターミナル近くの
インフォメーションでホテルを紹介してもらおうとしたのだが、
あいにくとどこも満室。
(折り悪く、大きな祭の前の日に来てしまったことを後になって知る)
さて、どうしたもんかと途方にくれかけているところに先ほどの爺さんが
再び近づいてきた。
どうだ、言ったとおりだったろうといった感じで笑いかけてきたので、
こちらも苦笑して、参ったよというしぐさをして見せて条件交渉に入ることにした。
ペンションと言っていたが着いてみると、
要するに爺さんの住んでいる家を部屋貸ししているだけだった。
観光客はそれほど多くないが、たまには来るが日本人は初めてだと爺さんは言っていた。
翌日、伝統的なトルコ風の家を見せてくれる、
ということで爺さんの友達の家に連れて行ってもらった。
ここモスタルはボスニアの中でも一番民族の入り混じった都市で、
内戦当時最大の激戦区でもあったそうだ。
町の真ん中を流れる川を境に住む場所が違っていたのだが、
あの戦争で全てが壊れてしまったと彼らは話してくれた。
昨日まで仲の良かった者同士が翌日から憎み、殺し合う。
何かがおかしかったんだと淋しそうに言葉を注いでいた。
いや、せっかく来た旅の人にこんな話をして申し訳ない、
と話を変えようとしたところでタイミングよくコーヒーが運ばれてきた。
これはトルコ式で入れてあるんだ。
トルココーヒーは飲んだことがあるか?
とご主人はすすめてくれた。
カップに口をつけたところで、
まずは泡だけを飲んで、そのあと少し待ってくれという。
しばらく待った後でようやくありついたコーヒーは甘みがあって、
まろやかでとても飲みやすくゴクゴクいけてしまう味だった。
最後まで飲んだところで粉が底に沈んでいるのが見えた。
なるほど、このせいか。
慌てて飲んでしまっては、
粉も一緒に飲んでしまうことになるからだな、と納得。
あれが初めて味わったトルココーヒーだった。
日本に戻ってからもトルコ料理の店で
何度か口にする機会はあったが、
やはりあの場所でいれてもらったものとはどこか違う。
時間が記憶を美化しているのかもしれないが、
旅先でもてなされたあの時の一杯は格別だった。
モスタルの象徴だった橋は当時、破壊されたままだったが、
近年再建されたそうだ。
その橋を再び観に行けたらな、と思う。

