■【今時?!のひやおろし】を愉しむ… | ■日本酒と料理の相性を愉しむ…■

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●季節ごとの日本酒とお酒のアテとの相性を愉しむ【お酒の歳時記】です… ●

■【今時?!のひやおろし】を愉しむ…

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…お酒

蔵元 三浦酒造(青森県・弘前市・大字石渡)

特定名称ほか 特別純米酒 生詰 秋上がり

原料米 豊盃米(地元農家契約栽培 精米歩合 60%)

酸度 1.7 アミノ酸度 1.2 酵母 協会901号酵母

日本酒度 +3 アルコール度 17

酒造年度 H24BY

 
9月に入って、WEBサイト上のSAKE SHOPから今年の「ひやおろし」が出荷情報のメールが次々と届いていて、どの蔵元のお酒から呑むか目移りしてしまいますが、今シーズン1本目の「ひやおろし」として選んだのがコレ、

【豊盃 特別純米酒 あきあがり】です。

 
これは青森の三浦酒造が、地元農家と契約栽培している「豊盃米」を磨き上げ、厳冬の時期に仕込んだ「特別純米酒」を一度火入れし、その後ひと夏の間タンクで熟成させてから二度目の火入れをせずに出荷したもので、「あきあがり」とは、夏場の熟成期間を経て「秋になってぐっとお酒の味が上がってくる」という意味の言葉です。

 
上立ち香はやや華やかで、「ラ・フランス」を想わせる熟した果実の香りや、「バニラアイス」のような甘い乳製品の香りがあり、「ほんのりフルーティーで穏やかな吟醸香」といった印象です。
 
口当りはソフトで、優しい甘味と輪郭のハッキリとした酸,そして芳醇な旨味が口に広がり、後半には僅かに苦味も感じられます。

全体としては、ややフルーティーなニュアンスが前に出てきているような感もありますが、キレのある酸と膨らみのある旨味とのバランスは取れていて、コクやボリューム感もしっかりとあります。

「程よく飲み応えのある飲み口で、やや甘い色気?を感じさせるフルーティーな味わい」のお酒で、「豊盃」ならではの「ひやおろし」という印象を受けました。

 
今シーズン1本目の「ひやおろし」ということで、今回は秋の味覚の代表格である「秋刀魚」を使った料理を2品選んでみました。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ まずは【新秋刀魚のお造り】です。
 
この時期に出回る「新秋刀魚」北海道産で、まだそれほど丸々と太って脂がタップリと乗っている状態ではないので、個人的には塩焼きにするよりも刺身で食べる方が好みです。

生姜醤油に付けて食べてみると、程よく脂が乗っていて旨味も充分にあり、生姜の風味と共に口の中でとろけてゆきます。

合わせてみると、お酒が秋刀魚の脂を上手く流してくれて、その一方では秋刀魚の旨味が「豊盃」の甘味を優しく包み込んでゆきます。

お酒と料理の両者が自然と寄り添ってゆくような印象の、とても心地よい組み合わせでした。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いては【秋刀魚の柔らか煮】です。
 
これは筒切りにした秋刀魚を、醤油,酒,砂糖を使って骨ごと食べられるくらいに柔らかく煮た惣菜で、コッテリとした甘辛の味わいがお酒を誘います。

 合わせてみましたが、この料理の濃い甘辛の味わいによって、「豊盃」の個性であるフルーティーな香味がやや消されてしまう感があり、相性が悪いという程ではないのですが、残念ながら今一つの組み合わせでした。

 この甘辛コッテリ味の料理には、もっとしっかりとした酸のある「山廃純米タイプのひやおろし」を合わせた方がベターなのかもしれません。

 
さて、今回呑んだ「豊盃 あきあがり」はいわゆる「昔ながらの熟成感のあるひやおろし」ではなく、吟醸香の漂うフルーティーな味わいが特徴なのですが、この「熟成感の無いタイプのひやおろし」は年々増えてきています。

少し専門的な話になりますが、春先に搾ったお酒を65のお湯に通して一度火入れしする際に、昔はそのまま数日かけて常温まで冷やし(この間に熟成が進む!)、その後ひと夏の間寝かせていたのですが、平成に入ってから「パストクーラー」という設備を導入する蔵元が増え、火入れ後に急速に冷却することが可能になり、さらには夏の間も冷蔵庫で熟成するようになったことが、その理由であると思われます。

お酒は嗜好品なので、新旧どちらのタイプの「ひやおろし」が好きかは意見の分かれる所だとは思いますが、とりあえずこの「豊盃 あきあがり」については、「今時?!のひやおろし」として素直に愉しめばいいんじゃないでしょうかね…。夜の街