■【菩提もと】仕込みの花見酒 | ■日本酒と料理の相性を愉しむ…■

■日本酒と料理の相性を愉しむ…■

●季節ごとの日本酒とお酒のアテとの相性を愉しむ【お酒の歳時記】です… ●

【御前酒 菩提もと純米酒 さくらほろり

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 辻本店(岡山県,恵庭市,勝山)

特定名称ほか 菩提もと仕込 純米生貯蔵酒

原料米 岡山県産「雄町」(精米歩合 65%) 

酸度 1.6 アミノ酸度 1.3

日本酒度 +3 アルコール度 15.5%

酒造年度 H22BY

【菩提もと】仕込みの花見酒

 3月末~4月初旬にかけて、東京では日中の気温が15℃を超える日が続いて一気に桜の蕾が膨らみ、週の初めには「東京の桜の開花宣言」が出されました

 例年この時期になると、「お花見」を意識した季節限定酒が各蔵元から登場してきますが、今年はこんな「花見酒」を選んでみました。

 その名も【御前酒 菩提もと純米酒 さくらほろり】です。

 「菩提もと」とは、室町時代に確立された「酒母(もと)」仕込みの方法で、日本酒造りの段階の一つに「米麹」と「蒸米」と「水」に「酵母菌」を加え、酵母を大量に培養する「酒母(もと)造り」という工程がありますが、「菩提もと仕込み」においては、通常の「仕込み水」の代わりに天然の乳酸菌を沸かせて酸性にした「そやし水」が使われるのが大きな特徴で、現在もこの方法によって酒造りを行っている蔵元は、全国で2~3蔵しか無いと思われます。


 香りは、「洋梨」を想わせる果実の香りや、「イチゴのショートケーキ」のような洋菓子の香りがあり、「爽やかな印象を伴なった、ほんのり甘く華やかな香り」が感じられます。

 口に含むと、まずはやや鋭角的な酸のバランスが強く感じられ、それを自然な甘味と滑らかな旨味とが後からフォローしてゆきます。

 コクやボリューム感は控えめで余韻も短く、スッキリとした酸が後口をスパッと切ってきます。

 まるで爽やかな酸を持つ「白ワイン」のような、「軽快でキレのある飲み口で、シャープな酸が主張する個性的な味わいの辛口酒でした。

 今回は「花見酒」ということで、「さくら」にちなんだ「酒の肴」を用意してみました。
■【利き酒師世界一】のひとり言■  まずは
【釜揚げ桜海老です。

 これは、春の漁期が始まった駿河湾産の「桜海老」を、大釜で塩茹でにしたもので、敢えて醤油などを付けずにそのままで味わってみましたが、薄い塩加減が桜海老の甘味を引き出して、口の中に海老の風味が一杯に広がります。

 早速「御前酒」と合わせてみると、このお酒のやや淡麗な味わいが、桜海老の繊細な甘味を決して消すことなく、うまく膨らませて行ってくれます。

 お酒が、桜海老をより美味しくする「調味料」の役割を果たしてくれているような、そんな印象を受ける組合せでした。


■【利き酒師世界一】のひとり言■  続いては【さくらチーズ】です。
 これは北海道の「共働学舎農場」から、毎年「桜の季節」限定で販売される「酵母熟成」チーズで、このチーズと色々な日本酒を合わるのが、私の例年の愉しみの一つとなっています。

 中身はしっとりとしていて口溶けがとても良く、程好い塩味と共にほのかな甘味と酸味が感じられ、食べている間中何とも言えない優しい桜の香りに包まれます。

 お酒と合わせてみると、「御前酒」のほんのり甘いフレーバーとシャープな酸,そして「さくらチーズ」のほのかな桜の香りとマイルドな酸味とが、それぞれお互いに心地良くマッチングし、今年も例年通り、このチーズは日本酒との素敵な「マリアージュ」を見せてくれました。


 話は変わりますが、室町時代には各地の寺院で「僧坊酒」と呼ばれる酒造りが盛んに行われていて、その中の一つで奈良の「正暦寺」で造られていた「菩提泉」という名前のお酒の仕込み方法が、今回の「菩提もと」のルーツとなったと言われています。

 何となく時代のロマンを感じさせてくれるお話ですね…。