日本酒をここまで悪くした犯人は誰だー48

 

米糠を米とする詭弁(きべん)

米粉糖化液

清酒業者の精米によって発生する白糠の内、赤糠を除去した比較的に澱粉質の多い上粉の部分を米粉と称し、酵素剤で糖化し、イオン交換樹脂と活性炭で精製ろ過した糖化液を三倍増醸の糖類の代替に利用する手法が比較的大手のメーカーで実施されていることが、目下の業界内で大きな議論を呼んでいる。

これのメリットは副産物の利用によるコストダウンと、さらには米粉は米であるとの解釈から、それに原料アルコールが付随するという二重のコストダウンによる有利さが魅力のようである。

寡聞するところによれば全国清酒業者の生成数量の約10%が糖化液使用清酒といわれていることからすれば、かなりの普及率というべきだろうし、その酒質に及ぼす良否、善悪は等閑視できないものがあるといえよう。

もし、酒質に与える影響のプラス面があるとすれば、これの実施をあえて秘匿する必要はあるまい。

業界としては、品質の一層の向上を図り、需要の進行を促進してゆく方針の下に三増、アル添をば漸次縮減しようとしている際、こうした手法の出現したことは新たな頭痛の種が増えたように見受けられる。

(ひろば K,I、生  醸協vol76 No12 1981)

 

[解説]

酒造りに使用する白米は、大吟醸酒の50%以下~75%程度まで精米します。

一般的な飯米は90~93%程度の精米ですから、精米歩合80%を越える糠(白糠という)の澱粉質の比率は非常に高くなります。

通常この糠は飼料や糊の原料、一部お菓子にも使われているようですが、糠としての販売価格は、米の価格から見ると問題にならないくらい安いものです。

米糠を米と見なす

澱粉質の比率が高いこの糠に酵素を加え、ぶどう糖の液にすることは、それほど難しいことではありません。

文中の「米粉は米であるとの解釈から、それに原料アルコールが付随するという二重のコストダウン・・。」というのは

酒を仕込むとき、添加できるアルコールの量は白米に量で決まります

仮に、白米1000㎏の仕込に、アルコール(100%)が300ℓまで添加できるとすると、それに米糠100㎏分の糖化液を添加すれば、理屈の上では、

        白米1000kg+米糠100kg=1100kg と、

1100kgの白米を使ったことになるので、アルコールは330ℓまで添加できるということです。

このように、

米糠を糖化したぶどう糖を醪に添加することは、

コストを下げる効果は大きいのですが、

品質的には三倍増醸的になります。

 

※ さすがに現在は、米粉(米糠)は米とは見なされていません。