律令国家の政治的大綱を規定した「大宝律令」(701年)の施行細則である
えんぎしき
「延喜式」には、平安時代初期の宮中での年中儀式や制度が記録されており、
さけのつかさ
造酒司で造った15種類もの酒の、原料からその造り方、年間の生産量、酒造用具にいたるまで、実に細かく明細に書かれているそうです。
造酒司における酒造りは、新米の納入が終わる陰暦の10月から始まりますが、酒の種類によってその時期が決められています。
ごしゅ くご せちえ
1、御酒 : 天皇への供御酒や節会酒として使われる主要な酒で、全体の量
の20%にもなる。
この酒の造り方は、当時の酒造りの基本形で、まず、蒸米・麹・
水で仕込みを行い、約10日間もろみを熟成させた後、粗く濾す。
次はこの粗く濾した液の中へ蒸米・麹を仕込み、やはり約10日間
熟成させ粗濾をする。この作業を4回繰り返して出来上がる。
しおり
このように、一度濾した液体の中へ蒸米・麹を仕込む方法は「醞
(絞るとか濾すという意味)」といわれる。
アルコール度数がどのくらいであるか、ちょっと想像できないが、
たぶん数%程度のかなり甘い酒であったと思わる。
2、御井酒 :初秋以降に造る酒で、仕込みに使う水の量が極端に少ないこと
から、アルコール度数はあまりなく、粘性のある甘い酒であったと
思われる
れいしゅ
3、醴酒 :仕込み水の代わりに酒を使い、麹の使用量を多くして、甘酒(ア
みりん
ルコール発酵をしない)を加えて、さらに甘くする現在の味醂に近
い非常に甘い酒で、盛夏に造る。
暑い夏、氷室から持ってきた氷を入れ、いわば「オン・ザ・ロックス」
的な飲まれ方で、暑気払いの酒として宮廷人に人気が有ったとか。
さんしゅそう うるちのよね もちのよね あわのうるしね
4、三種糟 :正月節会に使う酒で、米 ・ 糯米 ・精梁米の3種の原料を
別々に仕込んで造った濁り酒。
甘みを増すために、米麹と小麦もやし(麦芽)を併用するなど、
非常にユニークな酒である。
すりそう すり
5、擣糟 :節会に使われた酒。擣はすり砕くという意味で、ある程度熟成
もろみ うす す こ
醪を臼で磨りつぶし、水を加えて粗く濾す。
つづく