5月に「酒と言うもの」の連載を始めましたが、全国新酒鑑評会があったり、日本酒フェアーに参加するなど、臨時のテーマができたため途切れていました。その連載を再開します。
日本人と酒の関係は、水田稲作による「米作り」と、切り離して語ることはできません。
酒の原料が米であることはもちろんですが、水田稲作では
1、 灌漑(かんがい)に必要な水の確保と、そのコントロール
2、 集団をまとめる強力なリーダーの誕生
3、 自然を畏れ、神を祀る
など、自然の力、人の力、と神の加護が一体となることで、初めて安定的に米を確保することができるようになりますが、
その媒体として、「酒」が重要な役割を担ってきた
からです。
1、 灌漑(かんがい)に必要な水の確保と、そのコントロール
温暖で湿潤な日本の気候は、水稲作りには良く適している反面、山あり谷ありの急峻な地形に加え、梅雨時と秋の台風時にまとまって降る集中的な雨など、降れば洪水、照れば渇水、さらには洪水や、火山の噴火や地震などで、常に地形が変化するという、非常に厳しい環境です。
畑作農業では、平地なら平地、山なら山のその地形に合わせた畑を、それぞれの個人が自由に開墾しても、それなりの収穫が得られます。
ところが水田ともなると、全国に点在する棚田や千枚田に象徴されるように
① 相当量の水の確保
② その水を蓄える真っ平らな田ぼ、
③ 上から下にしか流れない水を、1枚1枚の田んぼに均等に行き渡らせる
水の配分
など、個人の能力だけではとてもできない発想力、企画力、実行力に加え、それに伴う大土木事業を実現させるための土木技術、労働力が必要です。
八岐大蛇(やまたのおろち)退治の舞台とされる、岡山県の高梁(たかはし)川の十二ケ郷用水の取水堰(せき)・湛井堰(たたいせき)など、今も全国に残る堰や用水、溜池などを見ると、
今さらながら先人たちの、
水田稲作に賭けた恐るべき執念と、
すごい能力
に驚かずにはいられません。