平成30年産総括 | さかたのみかん

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みかん農家として独立したので、タイトルを変えました。
家業は相変わらず、肥料屋です。

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みかんの出荷が年明けに少しだけ残ってますが、なぜこんな思考をしなかったのかという自戒と、結果的に成功だったということを30年産の総括をしたいと思います。

 
平成30年は本当に記憶に残る年になりました。
それは去年の今頃の天候まで遡ります。
みなさんも記憶に残っていると思いますが、30年は12月から1月と本当に寒かった。
30年産の開花が早かったのは冬の間の気温の低下が大きな要因の一つじゃないかと思います。
 
平成30年1月の福岡の気温です。
 
平成30年2月の気温です。
 
これはおそらく福岡市の気温だと思います。
福岡も、福岡市内、北九州、筑豊、筑後と南北に長いのでそれぞれで気温が違ったりしますが、気温の流れは参考になるんじゃないかと思います。
1月から2月中旬までとにかく寒かったのが分ります。
気温が低ければ、花が早くなるのは誰もが分かります。イチゴのようにわざわざ冷蔵庫に苗を入れて花芽を促進しますしね。
 
そこから、今年の傾向を早めに予想すべきでした。
花が早いということは、収穫期の熟期が早まり、収穫をいつものペースでやっても過熟になることが想像されました。
 
更に花が早かったので比較的小さな花が咲きましたし、花芽が促進されたために表年の園地ではかなりの花がきたので、小玉がいつもよりか多かったのではないかと想像しています。
想像でしかないのは、うちが裏年だったために、そういう木がほぼなかったためです。
 
小玉ならば早めに摘果を強めにやれば良い訳ですが、いつものペースというのは農家の強みでもあり変則的なことに対応できないという諸刃の剣ですので、私は「どうしなきゃいけないのか?」「なぜそれをするのか?」という思考を大切にしています。それでも反省することも多々あるものです。だから、思考が大切だと思っています。
 
さて、花の時期から夏へと移ります。
夏は夏で、もうここまでの干ばつはないだろうと思っていた28年産以上の干ばつでした。
 
平成30年7月の天気です。梅雨明けは9日でした。そこから雨が降ってないのが分ります。
 
平成30年8月の天気です。更に雨は降りません。二日ほど雨マークはありますが、葉水にもならない程度しか降っていません。
 
というわけで、梅雨明けから夏の間ずっと雨が降らずに気温もずっと高いままです。
雨が降り始めたのは、9月の秋雨前線が発生し始めた頃くらいからです。
この干ばつも果皮が弱くなったことへの大きな要因だったと思います。
 
そして、秋からエルニーニョ現象発生の予想のニュースが出ます。
みかん産地の太平洋側は暖冬になるために収穫期には雨が多く、収穫が思うようにはかどらないのではという予想ができます。
昨今は、収穫のために人手がどこの農家も足らないために、収穫遅れが今まで以上に予想されます。
 
結果はみなさんご存知の通りです。
9月から極早生が始まって11月下旬まではある程度順調でした。
しかし、暖冬特有の暖かい雨が多く降りました。
決定的だったのが、12月3日の雨です。
ここまで書いてきたように果皮が弱い上に過熟傾向、収穫はいつも通りなら腐敗果が増えるのは当然ですね。
特に12月3日からの雨以降に収穫したみかんは、木の上で腐敗しているみかんが多くて畑で捨てた園地も多かったようです。
 
そうやって日持ちが悪いみかんが多くできたために、生産県のみかん(特に九州)の転送が利かないために地元でだぶついてしまって価格がかなり下落したようです。
そのために、東京ではみかんが少なくて価格が高騰したんでしょうね。
 
ここからはうちの結果論ですが、以前も微量要素の必要性(石灰不足編)で書きましたが、去年は途中からでしたが、今年は樹勢回復期からカルシウムを葉面散布に常に混用しました。
目的は、今までなんとなく軽いなと思っていたうちのみかんを重くするためです。
 
カルシウムは細胞を作る際に非常に重要で、量も結構必要な成分です。
それを通年使用することで、割ったみかんに中央に空洞のない状態にするためでした。
結果としてそれが功を奏しました。
 
確かにみかんは締まったみかんができて、自然と重みも増していました。
締まったみかんは浮皮の発生も少なく、雨にも強いためにスーパーでの棚持ちにも影響なかったようです。
今までカルシウムは浮皮防止のために後半に散布して結果が出ないという方が多々いましたが、カルシウムは常に必要だということが分りました。
これはみなさんにもオススメです。
 
今年はこのカルシウムを効かせることを一番念頭に置いて作業していましたが、副産物としてみかんが綺麗になったように思います。
葉面散布は気孔から吸収させたいから葉の裏を重点的にかけろと言われています。
私はそれに昔から疑問を持っていました。
農薬に関しては、少量で効果的に効かせるために、比較的みかんを狙って散布していました。
今年はいろんな要素を効かせたいために、枝にもきちんとかかるようにしました。
すると、去年も綺麗なみかんができましたが、更に綺麗なみかんができました。
散布量はほぼ変わらないので、おそらく今までかかってなかったような角度から農薬が付着したのだと思います。
 
しかし、晩生みかんは早生までに比べるとどうしても収穫が遅れるために、それまでとは違って浮皮が多かったので、収穫が遅くなる園地はもっと散布すべきだったなと反省しています。
 
収穫までにこれらの対策ができていなかった方も、手伝ってくれる方の数次第ではありますが早めの収穫をすることはできたんじゃないかと思います。
ここで懸念されるのは、収穫を早めると味がそれぞれの理想までに乗ってない状態で収穫しなければいけないかもしれないということです。
しかしそれも微量要素の必要性(食味編)で書いたように、微量要素をしっかりと効かせることができれば余措中に味が乗ってきます。
 
ここまで書いてきたように、今年はこれらの対策が出来た農家とそうじゃない方との収入の差がかなりあるんじゃないでしょうか。
うちも裏年である上に腐敗果が多かったら、目も当てられない状況だったと思います。
だからこそ、結果論で終わらせるだけでなく、なぜそうなったのか、なぜそう考えなかったのかを振り返ることが経験というデータとして残るのだと思います。