あれ駄目、それ駄目、これしかない | さかたのみかん

さかたのみかん

みかん農家として独立したので、タイトルを変えました。
家業は相変わらず、肥料屋です。

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農業ではよく話題になることです。

うちも近くのお爺さんが気にかけてくれて、いろんな話をしてくれます。

「みかんの糖度を上げるには乾燥ストレスしかないんだから、とにかくタイベックを敷け!!そうすればここなら糖度17度、18度ができるんだから、金は自然とついて来る。」

「収穫間際のみかんに葉面散布しても意味ないから、金の無駄遣いだぞ!!」

言葉はきついですが、それには愛情がこもってるので自然と嫌いにはなれませんが、そもそも「あれ駄目、それ駄目、これしかない」という考え方って農業に存在するんでしょうか。

このお爺さんの畑は1年間草一本ない、とにかく裸地。

そうなると土壌表面に苔が生えてきますが、それも地道に鎌で取る。

そこにタイベックを敷くんですから、とにかく乾燥ストレスを与え続けています。土はガチガチに固まっています。

面積も5畝しかありませんから、それも可能でしょうが、さすがにうちがそれを真似ることはできませんし、先方もそれは重々承知されてます。

みかんの場合はストレスフリーな状態で作っても糖度がのらないことはこちらもよく分かっています。

だからこその後半のリン酸補充であり、草刈りだってするし、水源がないから仕方ありませんが、干ばつ気味になっても潅水のことなんて考えないわけです。

しかし他の周りの人のように、「あの人は面積も狭いけん遊びみたいなもんや(笑)」とも思いません。

あんな年齢で体も十分じゃないのに急傾斜の畑を登るだけでも十分に敬意を払うべきです。

私もよく書きますが、みかんに限らずですが、卵が先か鶏が先かみたいな話ではなく、美味いものを作らなければ売れないのは明白です。
それは青果だろうが加工品だろうが同じことですね。
農家は青果で出荷できない物を捨てるよりもどうにかお金にできないかと加工品に手を出そうとしますが、そんな感覚では成立しないので、私は手を出さないんです。

ですから、まずは投資しなければいけないこともよく分かっています。

それには資金力が必要なことも。

「タイベックは5年は使えるんだから必ず元は取る」と言ってくれますが、その時に何ができるかはその農家の資金力、労働力など様々なことをそれぞれが考えなければいけないと思います。

そのためには、『目標をどこに置くのか』ですね。

このお爺さんが言うようなみかんを目標にするのなら、タイベックは必須だと思いますし、それに伴い栽培面積や労働力確保など経営の根幹から考え直さなければいけません。

うちの目標はそこにはありません。

今の目標は「糖度12~14度以内で毎年ほぼ同じ量を収穫すること」です。

そもそも、 糖度を18度に上げることができたとしても、今の私の技術レベルでは隔年結果をひどくするのが目に見えています。

しかも、家庭環境の違いも大きいです。

仮に5反くらいまで面積を減らしたとして、1反に4トン収穫し、1kg1000円で全てを販売しても200万にしかならないわけです。

(訂正)
ご指摘いただきましたので、訂正します。
単純な計算ミスをしていて、お恥ずかし限りです。
こんな拙くて長い文章を細かく読んでいただいていると思うだけで感激です。。

200万じゃなくて、2000万ですね。
一桁違うだけで、急に夢が持てるような数字ですね。
本当に1000円で売れるならですが…。
でも、個人的には普通に生活してる人がそんな手の届かないような価格で販売されるよりも、もっと手の届く価格帯で販売したいですね。
(訂正終わり)

農業には必ずロスする分が存在しますから、この計算よりも少ない収入になります。

それを補うためにはまずは量が必要です。

確かに単価は高い方が良いのは誰でも考えますが、新規就農者はそこにあまりにも夢を求めすぎるから失敗しやすいのでしょう。

量や面積があることはリスク管理にもなります。

極端な話ではなく、気持ちは毎日どこか貸してくれる畑はないかと思ってます。

しかし、高齢化や後継者がいないと言っても、おいそれと畑が出てくるものではありません。

では、やるべきことは何かということで、今までの物を全て白紙で考えて、今持っている面積で収穫量を増やすことを選択し、技術も変えたわけです。

ま、当然の結果ですよね。

今までも同じことを考えていましたが、やっていた方法にこだわりすぎていたことも否めません。

まずはそこをクリアーしなければ、お爺さんが言ってくれているレベルまで行くのは無理だと私は考えています。

どんなにやり方を教えて貰っても、その人と全く同じようにできないことは今までの経験でよく分かりました。

一足飛びに物事が進まないのもよく分かりました。

なので、全てのことを頭に留め、今の目標がクリアーできたらその次はお爺さんのレベルが目標かもしれませんし、違うかもしれません。

私たちのような若い農業者はそんな話を聞いて選択していくことが先輩たちからの助言に報いることじゃないですかね。。