学習塾講師や私立学校の教員は三年以内の離職率が最も高いそうです。子どもの人生がかかっているのでご両親から期待は当然大きくなり、先生にかかる負担は、相当大きくなります。家庭教師先で塾に対する不満を耳にしますと、塾の先生も大変だなと思います。もっとも、ご家庭にお伺いして指導する家庭教師も味方はゼロで完全アウェイ状態なので、けっこうキツイですね。

 最近、東大生をウリにしている家庭教師センターが増えた気がします。私ももともとは「東大創秀会」というところをメインに指導していたので、人のことは言えないのですが・・・(もっとも、私は東大ではありませんが(笑))。

 言うまでもなく、東大生の皆さんは優秀です。頭が良く点数を採るのが上手だから東大生なんです。ですので、勉強の習慣がついている子には、とても有効な先生だと思います。言われたことを聞いて、それを使って解こうとする子は、東大の大学生の先生でどんどん伸びると思います。私も以前、東大創秀会で御三家志望の子ばかり指導していた時期がありました。おそらく他の先生方も同様の意見だと思いますが、御三家志望の子を指導するのは、かなり楽で楽しいんです。少しヒントを出しただけで、一生懸命考えてくれる。説明すれば、きちんと聞いて、あとで復習してくれる。そのうえ、指導ストレスは少ないのに、御三家というだけでお給料が良い。さらに、合格すれば、御三家に合格させたと書くだけで、なんかすごいと思っていただける。実際には、「この子は僕が教えなくても合格するな」と思っていますが・・・

 負担が大きいのは、偏差値が低い子を指導する場合です。この場合に皆さんはどう思いますか?簡単な問題を教えているのだから、誰でもできるはず。ちょっと解答を見れば、親だってできる。代わりはいくらでもいるのだから、お給料も安くて当然だ。こういう考えの方が多いと思います。私も教える側でなければ、こう思っていると思います。

 ただ、実際に代わりがいっぱいいるのは、偏差値の高い子を教える場合だと思います。なぜ勉強しないかと言えば、

自分が嫌いなことはやらないからです。

我慢ができないからです。

自分の都合の悪いことは聞かないからです。

こういう子たちに勉強を教えるためには、

最終的には我慢することを教えなければなりません。最初は楽しく授業をしていれば済みますが、ご両親が望むような学校に入れるためには、やはりしつけをし直さなければならない部分が多いです。

 「お金を払っているんだから当然だ」という意見もあると思います。ただ、親が毎日一緒にいてもしつけができないのに、

週に2時間ぐらいでしつけができるようであれば、こんな状態にはなっていませんよね?家庭教師としても、いただいた時間内で最高の効果を出したいと考えていますが、やはり無理なものは無理な時があります。お子さんの状況がどういう状況なのかを見極めて、学生を使うのか、プロを使うのかを判断するのがよいと思います。

 幼稚園選びの時に、あるお母さんがこんなことを言っていたのを思い出しました。

「うちの子はわがままだから、きちんとしつけをしてくれる幼稚園がいいわ」

「うちの子は型にはめられるのが嫌いだから、自由な幼稚園にする」

幼稚園は主に団体行動を学んで、その中で我慢や協調性を養うことが目的だと思います。家でやるべきしつけを、幼稚園がすべて代行してくれるわけではない気がします。塾や家庭教師も一緒で、目的は学力を上げることで、しつけがメインの目的ではありません(ある程度の我慢を教えることは、目的の一つだと思いますが)。このあたりのうやむやで曖昧なことをはっきりさせたうえで、志望校、塾や家庭教師選びをした方が、効果が出やすいと思います。このミスマッチが減らないと、教育関連事業の離職者が減らないだろうなあ

と思う一日でした。