神楽坂「ふしきの」の営業日記


お店のカウンター内にちょっとした展示スペースがあり、
そこに石の彫刻を置かせていただいています。


作品名は、「Ninguen a」


大阪に在住の彫刻家、冨長敦也さんが作られた作品で、
日に日に、お店の景色に溶け込んでいっていて、
お店の設えの中でも、気に入っているもののひとつです。


トラバージンという石を使って作られていているのですが、
照明の加減によって、微妙な陰影が浮かび上がり、
この人間Aを見ながら、ゆるゆるとお酒が飲める雰囲気です。
たぶん、僕だったら何時間でもお酒を楽しめてしまいます、笑。


李白の「月下独酌」の詩をご存知の方もいらっしゃると思いますが、
お店のお客様の中には、お一人で見えられる方もいらっしゃって、
月と影のような対酌される相手として、この人間Aを想定しています。


この冨長さんのことを知ったのは、
お店がオープンするちょっと前、8月に入ってからののこと。


ちょうど冨長さんが東北地方の被災地を巡られ、
行く先々で道祖を彫るという活動をなさっていたのですが
偶然にもその活動の帰りの道中、東京で立ち寄られたギャラリーで、
ご挨拶する機会に恵まれました。


今から思い返してみても、ホント、絶妙のタイミングだったと思います。
お店の内装が決まっていて、床脇のようなスペースを設けたものの、
お花や香炉を置いたのでは、あまりにも無難過ぎますし、
何かいいアイディアはないかと、悩んでいた最中のことでした。


初めてお会いしたとき、東北地方で彫られたという、
道祖のひとつを実際に拝見させていただいたのですが、
その作品が持つ力と、何より冨長さんのお人柄に惹かれ、
是非、この場所に冨長さんの作品を置かせて欲しいと、
無理を言って、オープン直前に送っていただいたのがこの人間Aです。


石の彫刻を手にするのは、これが初めてのことだったのですが、
石という素材自体が自然のものだからなのか、
それともそこに手を加えた人の想いがこもっているからなのか、
人間Aがまるで生きているような、そんな錯覚すらしてしまいます。


当初、このスペースは、季節ごとに置くものを変える予定でいましたが、
ここまで空間への収まりがいいと、そういう感じではなくなり、
今はむしろ、「人間A」にこの場所に居続けてもらおうと思っています。


そう、この「人間A」を作られた冨長敦也さんの個展が、
タイミングよく、12日(月)より銀座のギャラリーで行われます。
会期中、何とか時間を取って、僕も訪れてみたいと思っています。


【Ninguen 冨長敦也展】
 会期:2011年9月12日(月)~9月17日(土)
 時間:11時30分~18時30分(最終日は16時30分まで)
 会場:ギャラリーゴトウ
 住所:東京都中央区銀座1-7-5 中央通りビル7階
 http://www.gallery-goto.com/


【冨長敦也さんのホームページ】
 http://tominagaatsuya.com/