　書道には色々な学び方がある。流派もあるし、師匠の考え方もある。

　でも必ず、テキスト(法帖)の臨書はすると思う。

　1冊終わったら次、次と沢山の法帖を学ぶ人、一度に何種類もの法帖を学ぶ人、自分の好きな法帖だけをずーっと学ぶ人、大字で練習する、原寸で練習する、色々だと思う。

　ここにあげたのは、私が練習した法帖の一部ではあるけれど、複数回練習してきた法帖達である。

　40年書道学んでる割には少ないんじゃないかな？

　高校時代は、師匠が法帖から手本を書いてくれて、色々な種類を書いた。

　しかし、卒業してからは2，3年は同じ法帖を繰り返し繰り返し練習している。

　まずは半紙に、4字から6字ずつ練習する、次に半切に2行、3行書きで練習する。更に原寸大で練習する。

　臨書をして、次には5字句ぐらいの言葉に法帖の文字を探して書く、これを倣書と言う。同じ文字があればいいが、ない時は偏や作りから字を推測して書く。

　これを沢山沢山繰り返し、活字だけの漢詩文を、学んでる法帖に似せながら作品にするのだ。

　最近、全臨したものの、一部

　同じ法帖繰り返して飽きない？とか聞かれるけど、私は飽きないの。

　何回やっても、新しい発見がいっぱいあるし、毎回難しい。同攻略してやろう？って向き合うのも又楽しいし、壁にぶち当たってガックリくるのも又燃えるんだよね。

　そんな中

　私の座右の銘、ならぬ座右の法帖は集字聖教序と、自叙帖。

雁塔聖教序は楷書のバイブル。

仮名文字は関戸本古今集。だと思っている。

　そこから何を学ぶか？

　別にコピー職人になる訳ではないから、形をそっくりマネても意味がない。

　紙面に現れていない、空書部分の腕の動き、筆画の呼吸、それらから生まれる書の形とリズム、そんな事を学びたいのだ。

　師匠からここ数年、殻を破れ！と私が絶対選ばないであろう法帖ばかりを練習するよう指示される、呉昌碩、黄山谷などだ。

　どうにも私には手に負えぬ。

　マネは出来るが、書いても気持ち良くないのだ。おそらく私とリズムが違う性格がかけ離れているのだろう。

　筆画の情は褚遂良が好きだ。

　おおらかな息の長い筆画は懐素がいい。

　そしてそれらを全て内に内蔵して。あたかも表面は端正極まりない王羲之はやはり最高なのだよ。

　私の書く文字が単調でストレートなのは未熟だからだが、だからといって色々小細工を加えた表現過多の文字は虫唾が走る

　あらゆる感情を薄皮に包んで、一見普通だが、奥深い書が書けたら最高だろうなあ。

　私の技術じゃまあ、無理だわ。

　でもね、王羲之の文字を見ながらそんな事を感じ取れるようになった自分は、少し成長したなと思う。

　高校生の時には隙のない王羲之の文字に手も足も出なくて、こりゃダメだ。私には感情豊かな顔真卿がいいや。って逃げていたもん。

　書は奥深い

　目指すところ、好みの書は人それぞれ。だから面白い。

　顔形が違う、性格が違うように、書も皆んな違って皆んないいんだよ。

　但し、筆をきちんと使える。筆鋒を真っ直ぐ立てて紙面をとらえる。それだけは出来なきゃ、筆で文字を書く意味がない。

　最近の書道家でも、案外この基本が出来ないけどね。

　何しろここ習得するには莫大な練習がいるから。

　でも、どんなに形を色々にしようと、墨や紙を特殊にしても、筆使いは誤魔化せないのよ。見りゃすぐわかる。

　鈍くさいけど根性はあると、師匠は見抜いたのだろうか？門下の中でも私ほど筆の持ち方、線の引き方だけを何ヶ月も練習させられた人はいない、筆使いだけを長年鍛えてもらった事を今は本当に感謝している。それだけが、私の唯一の自信。

　基礎や基本はそれを徹底するには相当な我慢がいる。それは学ぶ方もだけど、教える側もなんだよ。

　私は未だに師匠から筆使い注意される。身についてはいても更に深く自分のものにするにはまだ足りないと言う。

　だから練習の最初は初心と同じ、ただ只管線を引く。生徒さんの指導の合間もただ線を引く。

　それほど基礎基本って大変。

　今、時代の変化が早い

　書道のような時間のかかる習い事、趣味はやる人が少ない。

　だからといって、安易に人に、うける方に流れるのは違うと私は思う。　

　書道、能や歌舞伎、バレエやオペラ、クラシック音楽、そうした観るにもある程度の知識を必要とする芸術、それは門は開くけど敷居は下げちゃいけない。と私は思う。

　それをしたら一時はブームがくるが、廃れちゃうし、元々からのまともなファンも失うから。

書道のこと