「健二。あなたの期待通りだったかしら?」

「もちろん、それ以上だったよ。杏奈。」

「こんな質問、馬鹿げていると言われそうだけど…」

「言わなくても解っているよ。君を愛している。
 ここでなら永遠と言う言葉がぴったりだろ。」

「一度はあなたを裏切ってしまったのに…」

「君は他の可能性を探そうとしただけなんだよ。
 選択肢が僕だけじゃなかった。それだけの話さ。」

「あなたは、いつも優しかった。
 私はあなたの為に、一生懸命尽くしたわ。
 でも、あなたは愛するふりをしながら、
 私を見てはくれなかったの。」

「杏奈、君の事が重荷だったんだ。
 尽くしてくれた君を
 裏切ってしまった事を後悔している。」

「あんなに愛していたのに…」

「諦め切れずに君を追いかけた、
 その手を振りほどいて君は歩道から飛び出した。
 そして…」

「あなたの背中の温もりが好きだったの。」

「もう、俺の事は忘れてくれ。」

「今とても幸せよ、健二。
 お腹にはあなたの赤ちゃんが…」

「あんなに愛していたのに…
 もう、二度と会えないなんて…」

「健二っ!
 いつもゴロゴロしてないで、たまにはどっか連れてってよっ!
 もお~~~っ!!」

「痛っ!!
 亭主を蹴飛ばすんじゃねえっつうの!」

「必ず幸せになろうね」




『私』の愛した杏奈の存在する世界は、無数に存在した。
当然ながら無数の結末が存在する。
ハッピーエンドで終わらなくてもがっかりする事はない。
どの結末も間違い無く存在するのだから。