妄想です。




自己満足のBLです。




妄想ですから…アセアセお願い






2ステージはあっという間に


当日になった

2ステージは約40名から約20名になる

演奏は

一人35〜45分



最終日の午後が智くんの演奏

午前から

他の人の演奏を

聞きながら智の出番を待つ翔


ロードレースの仲間や

ネイガウスや東山も聴いていた。


智くんと同じ曲を弾く人もいる

翔はその違いに驚く


上手…下手とかではなく

曲は同じなのに


ポロネーズNo.5-Op44

涙は出ない


とても暗く重いけど…そこに悲しみがない


「とても美しい曲じゃ

ポーランドの歴史的部分を考えているな」


ネイガウス先生は呟く


「大ちゃんのは

人生みたいな捉え方なので…」


と東山先生が言っていて

違いがわかった


他の人の

プレリュードNo24-Op28も

何故か…絶望感は無い…



最終音が軽くなる


「羊ちゃん

ご機嫌が悪いな…響かないな」


とネイガウス先生が言っていた


「最低音はどうしても

打鍵機によ左右されますね…


知り合いのコンサートチューナーが

話してたんですが


どうやら

今年ワルシャワは

夏湿気が強くて秋乾燥したので

フェルトが硬くなってるみたいです

かなり手こずってますね

高音は硬くなり

低音は音が響かない」


なるほど

智くんが気にしてたのも…それか

長いクラッシック音楽も

二人の解説でとても楽しくなる


とても美しい音は

ピアノだけじゃなくてピアノを弾く人で

変わるんだ


余韻とか強弱とか

呼吸の間とか…


午後になってすぐ


司会者が智くんを紹介する

ピアノは1ステージのままKawaiなんだ


紹介を聞いて

会場がざわつく…

1ステージとは違う


「きたきた、この人のピアノ

詩的な捉えが最高なんだよ」


「ためらいがちのタッチがいいの

piano(記号)がね

とても柔らかい」


褒めてくれてる  



会場に現れた智くん

拍手が凄い


智くん

足音がしない……ピアノの横に立ち客席を見て

お辞儀をし


もう一度会場全体を見て


智くんと目が合う…

微かに笑う


さすが…智くん緊張してないな


椅子にジャケットを捌き座る


ファサ

皆が息を飲む


智くんは…ショパンにご挨拶中

智くんの時はゆっくりだから

少し焦ったく感じる


「ふふっ」と微笑んで始まる


ポロネーズNo.5-Op.44


静かに下を向き…前を見て


始まる…

智くんの手が上がる


静かな始まり…


何がが始まる…

と全身かざわつく感覚


これから

智くんの悲劇が始まる


ネイガウス先生も東山先生も

身構えた…


会場に子供の智くんが

「婆ちゃん、婆ちゃん

助けて…助けて」と叫びながら

リヤカーに乗せて病院…に行く姿が



先生に

そして神に仏に全てのものに

願っている


死なないで婆ちゃん

連れてかないで…


助けて…


泣く智くんが

そして

宥める祖父に

爺ちゃん…婆ちゃんを助けてとすがる


智くんの孤独


茫然と一人月を見ている


草から露が智に落ちる

ポタ…ポタ

どうする事もできない


孤独…


人は死ぬ

どんなに…どんなに願っても叶わない


小さな智くんが

悲劇の中

それでも美しい山には

美しい水が流れる

…茫然と立ちつくす小さな智くん


山の水の流れを止まらない

時は止まらない…


会場に涙を押さえる人が出る


パワー任せではなく

強い音が激しいのでなく

弱い音が柔らかで切ないから

強い音に


深みがある…



智くんの悲劇を知らない人が


泣いている…

ピアノの情景描写が泣かせている

そして

静かに終わる


次のプレリュードNo.20〜24-Op.28

絶望へのプレリュードで

会場はどうなるのか


翔は涙を拭わずに

智の

悲劇を受け止めていた…