妄想です。



自己満足のBLです。
妄想ですから…


露天風呂の水の音

雪化粧をして
白く浮き上がる
カムイミンタラ

静かな畳みの香りが
上がる部屋

翔は…智のコンタクトをつけた
瞳を見ながら

「智くん
陽炎…って…

私を見つけたのは
偶然…ですか…」


「偶然だよ…
アトリエを決めたのは…
春まで秘密だけど

翔くんに
会えるなんて思ってなかった

会いたいとは思ってたけど」

「あの…
智くんは

あの後…恋をしたり
しなかったんですか…」


「そんな暇はなかったし
翔くんにずっと
恋をしていたよ…

アトリエを構えるまで

自分を見つめて
心の声を聞いていた

翔くんが好きな事を
何度も確認して…

そろそろ
食事
片してもらおうか」

「あ…そうですね…」


智がフロントに連絡している
翔は
胡蝶蘭
まだ蕾が三つある…

翔は
智がやったように
手で蕾を包んでみる

湿気が必要か…

洗面所で
翔は手を洗って

もう一度
蕾を手で包む

「翔くん…その子は…
その下の子が待ってるよ」

「下ですか…」

翔は
下の蕾を包み直す

「私でも咲いてくれますかね」

「どうかな…」


中居さん達が後片付けをしても
翔は
蕾を包み続けた

カサッと動いた気がする

智が覗き込む

「ふふ
まだかな…」

手を離して翔もみる
「うわぁ」

ゆっくり
蕾が開き始めた…

「翔くんも
咲かせられたでしょう…

この子は
昨日まで寒くて乾燥していたから

暖かくて気持ちいいみたいだね」

二人は静かに
ゆっくり開く胡蝶蘭を見ていた。

「条件が整ったんですね…
私達も
条件が整ったんですか」

「ふふ
整ったから

胡蝶蘭が
記憶の
引き出しを開けてくれた…
のかもね

恋をしよう…
ドキドキする恋…」


「本当に胡蝶蘭が…   
引き出しを…
智くんは…」


「胡蝶蘭はね着生植物
本当は   
熱帯雨林の日の入らない
木の枝の間に
守られて
棲息して
人を見下ろして花を咲かせるんだよ…

大きな幹の木陰で
幹に根を這わし
雨季の雨や日々の霧を全身で受けて
そして暖かくて蒸し蒸しの中

育ち
見事な白い花を咲かせる

日本では苔で栽培されていて
乾燥には強いって
誤解されているけど

幹に居るから…
土では
息ができなくなるからね…

でもね
身体全体に
常に湿気が必要なんだよ…

拗ねている
胡蝶蘭が多いのは
栽培方法が間違えられてる事が多い

日陰が好きだから
室内で育てやすいようだけど
たまに
室温18°ぐらいの
シャワーを全身に浴びせて
あげなきゃ
拗ねちゃう…

ここちいい
風も好き

更に本当は
大好きな熱帯の灌木に会いたいのかも

昔、胡蝶蘭を熱帯雨林に
採取しに行って
取り憑かれたとか

幻をみたとか

熱帯雨林の中から何人も帰って
来れなかった…


灌木が取り憑いて
人の手から守ったのか…
胡蝶蘭が
幻を見せて惑わせたのか…



胡蝶蘭は
大好きな木から
ハンターに無理矢理離され

ここに連れてこられた
寂しいだろうね…

花言葉
純粋の愛

一生ともにいるはずの
灌木を
遠い地で培養された
この子達は記憶してるのかも

だからね…
時々いたずらするんじゃないかな…

恋しい人を
無くさない為に
僕の両親のように
すれ違ってしまわないように…」

胡蝶蘭が揺れる…