妄想です。





自己満足のBLです。





妄想です。



授業が終わると
おいらは旧校舎の美術室に向かう
三年〜六年(高校)からは新校舎の美術室
一〜三年(中学)はこの木造校舎

智は木の匂いがして
西日が当たる
人が少ない旧校舎が好きだった

美術室に向かう

その途中に
いつも人気のない
ピアノの練習室がある…

今日はピアノを弾く音がする


窓を覗く
翔くんは心地良さそうに
ピアノを弾いていて


しばらく覗いていたら
翔くんが
気づいてくれた

手を振ると

中に入れてくれた
「智くん…これから美術室?」

話しながらピアノを軽く弾いていた…

「うん、おいら
今、風山賞の作品を描いているんだけど
水彩より
油彩がいいらしいんだ

あまり油彩は慣れてないから…
先生に見てもらってるんだ…

翔くんは
コンクールの練習してたの?
桜色の音が聞こえたよ」

「さくらいろ?」

「うん、桜色が
溢れてきたよ…」

「そうなんだ…
これは…何色だったの」

と言うと翔くんがピアノを弾く
入学式の曲

これは
真紅かな…

「真紅…かな…
でも
翔くんの音色は波の音が聞こえるよ」

翔くんのピアノの音
気持ちいい…

美術室に行くのを忘れて
翔くんをスケッチしていた…

目がクリクリ
下唇は厚いな…
首へのラインがしっかりして

手は肉厚で


翔くんのピアノ音色を聴きながら
心地いい…
慣れない油彩で悩んでいた気持ちが
楽になった

スケッチブックには
翔くんのパーツでいっぱいになった



ざー
どぶーん
しゃら しゃら   ちゃらちゃら…

翔…

今日は練習室の予約が取れず
旧校舎のレッスン室になった…

木造の旧校舎
防音も弱く
かめ虫がでたりてんとう虫が出たり
空調設備も悪いから
ここの練習室はいつも
空いている…

俺は虫が苦手だから
なかなか集中出来ずにいた

曲を弾きながらも
あちこちに目がいってしまう…

西日が当たり
木の匂いが広がり
心地良くなってきた…


かた…

え?
ドアの嵌め込みの円窓に
智くん?

顔を出して
可愛いく手を振っている

ドアを開けると
身体より大きな画材バッグを持って
ふにゃりと笑った

「中に入って」
と背中を押すと…静かにと入ってきた
足音がしない

練習室が柔らかな空気になった

ピアノのをいじりながら
話しをしていたら

弾いていた曲が桜色だったと話す
智くんには
音も色になるのかと思い

ベートーベンの曲も弾いてみた

次は真紅だった


智くんがいると
指が動く
身体が軽くなる
気持ち良くて練習が進む

モーツァルトの課題曲を何度か
手直ししながら
弾いた

見ると
智は静かに座って
唇を尖らせ絵を描いていた

しばらく見ていた

睫毛が長い…
手が綺麗…


気づいた智くんが
慌てて
「美術室で先生待ってるんだ…」
と立ち上がり

「お邪魔しました。
ここ心地いいから
また、来てもいい?」

と下向き加減で聞いてくれた顔……

「もちろん、僕も智くんがいると
練習が捗るから嬉しい!」

って答えた…
多分…真っ赤になってたな…

次の日から俺は

旧校舎の練習室を使うようにした。