妄想です。









自己満足のBLです。








妄想です。

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雨音が静かに聞こえ始めた
部屋の中に雨の匂いが広がる…

智は葉に滴る雨粒を
追っている…

「智さん
過去は変えられません…
でも
記憶のない過去を
願望であったとしても
都合よく考えてもいいと思います。


あなたは翔さんのところに
預けられたんです。

お母様から
あなたの為だけの菩薩の腕に
二回も
落ちて来たんです…

それだけで
いいんじゃないでしょうか…」

雨音がおもとの葉から鳴りだす。

夢は無意識の心の底の欲を
表し…
深い傷を直していく…

無意識に


智は雨に濡れていく土の香りを
感じながら

「本当に
それでいいのでしょうか…」

「大丈夫じゃないでしょうか
翔さんは
刺繍を刺している智さんの
菩薩の庭にいるんですから…」


雨に濡れ
植物が命を震わせる…
カエルの鳴き声が
命を伝える…

智は柔らかな笑顔で

「そうなのかもしれないですね…」

医師は
「また…何かあれば
遠慮なく
お話してくださいね…」

と残りのお茶を飲み干して

「話したくなけれ
答えなくていいですが…
あの…翔さんの前に
お付き合いした方の時は
この様な体験は…」

智は少し考え

「いましたが
なかったです」

「そうですか…
やはり翔さんだからなんですね」

智は
作業場に戻った

医師は
哲と話した後
帰りに作業場により
翔に昨日より分厚い本を渡し

「必ず読んでください」

と告げて帰っていった…

智はすでに刺繍の世界に入っていた
優しい笑みを浮かべながら

針を進めていく

西日が作業場の奥を照らす頃
智を銭湯に迎えに
潤がきていた…が

潤は
智はいつものこと…と思っていたが

翔さんは智の横で
朝より更に分厚い本を読み
声を掛けても聞こえないようだった。


「くそ!似た者同士だな
翔さんまで…

あー、どうするか?」

潤は翔さんの本の上に

智を銭湯に連れて行くきたいから
智に声かけてくれ。

と紙に書いて置いた

翔はその紙をしばらく見つめ
顔をあげ

「あっ、すまん…」

翔は少し間を置いてから
「智くん…日も陰りましたよ
銭湯に行って汗を流して来てください」

智の手がゆっくり止まり
翔を見つめ
「そうだな…」

「私が見えてますか?二人共…」

「すまん、見えてる 笑」
と翔

智はしばらくして、ようやく
「潤…あれ?いつからいたんだ?」

潤は肩を落とし
「銭湯を誘いに随分前から
ここ、あなた達の前にいたんだけど

まっ、いつもの事だけどね…」

「潤…ありがとうな
雨が強くなる前に銭湯行くか…」

潤はため息をつきながら
刺繍の事で頭が一杯で
ボーとした智を
雨傘で守りながら銭湯に連れて行く