おらおらでひとりいぐも 第158回芥川賞受賞/河出書房新社
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メディア掲載レビューほか


幸せな狂気

〈あいやぁ、おらの頭このごろ、なんぼがおがしくなってきたんでねべが〉

昨年度の文藝賞を受賞した若竹千佐子の『おらおらでひとりいぐも』は、主人公桃子さん74歳の、内面から勝手に湧きあがってくる東北弁の声ではじまる。

24歳の秋、桃子さんは東京五輪のファンファーレに背中を押されるように故郷を離れ、身ひとつで上京。それから住みこみで働き、美男と出会って結婚し、彼の理想の女となるべく努め、都市近郊の住宅地で2児を産んで育て、15年前に夫に先立たれた。ひとり残された桃子さん、息子と娘とは疎遠だが、地球46億年の歴史に関するノートを作っては読み、万事に問いを立てて意味を探求するうちに、自身の内側に性別も年齢も不詳の大勢の声を聞くようになった。それらの声は桃子さんに賛否の主張をするだけでなく、時にジャズセッションよろしく議論までする始末。どれどれと桃子さんが内面を眺めてみれば、最古層から聞こえてくるのは捨てた故郷の方言だった。

桃子さんの人生は戦後の日本女性の典型かもしれないが、他人が思うほど悪いものではない。最愛の夫を喪ったときに根底から生き方を変え、世間の規範など気にせず、〈おらはおらに従う〉ようになったのだ。話し相手は生者とは限らない。そんな〈幸せな狂気〉を抱えて桃子さんは孤独と生き、未知の世界へひとりで行こうとしている。

日々を重ねなければ得られない感情には、〈悲しみがこさえる喜び〉もあるのだ。63歳の新人作家は三人称と一人称が渾然一体となった語りを駆使し、その実際を鮮やかに描いてみせた。お見事!

評者:長薗安


◎文藝賞全選考委員絶賛!
「東京オリンピックの年に上
京し、二人の子どもを産み育て、主婦として家族のために生き、夫を送って「おひとりさまの老後」を迎えた桃子さんは、戦後の日本女性を凝縮した存在だ。桃子さんは私のことだ、私の母のことだ、明日の私の姿だ、と感じる人が大勢いるはず」
――斎藤美奈子氏
「宮澤賢治「永訣の朝」にある「Ora Orade Shitori egumo」のフレーズ。それを悲しみのうちに死ぬの意ではなく、独り生きていく「自由」と「意欲」に結びつけた。「老い」をエネルギーとして生きるための、新しい文学が生み出された」
――藤沢周氏
「人の気持ちは一色ではないということを、若竹さんはよくぞ摑んだ。年を経たからこその、若々しい小説」
――保坂和志氏
「取り返しのつかない命のなかで、個人の自由や自立と、その反対側にある重くて辛いものも含めた両方を受け取って、人生を肯定的にとらえるまでにいたったのが見事」
――町田康氏

◎早くも話題沸騰! 反響続々!
「ほんとはね、ほんとは「独りがいい」。出会いも歓びだが、死別も解放だ。地声で語られた女のホンネが炸裂! 」
――上野千鶴子氏
「死すことのない共同体の言葉。それが支える「老い」の姿に初めて触れた。「頭の中に大勢の人たちがいる」ことは、きっと孤独ではない」
――小林紀晴氏
朝日新聞、読売新聞、産経新聞、東京新聞、共同通信ほか、絶賛の声多数!


第158回芥川賞受賞作。

作者jは55歳から小説口座に通い始め8年の時を経て本作を執筆。


私より3歳年上の方なんですね。

紫式部から連なる、いかにも女性の文学という印象なのは、方言の表記がひらがなの多用になるところにも依るのかもしれません。


その文体で、桃子さんの頭の中の会話や回想を通して

故郷を捨て、結婚し二人の子供を育て上げ、夫に先立たれ、一人残された桃子さんの孤独と自由を描き出すことには成功していると思います。独自の作風は主婦作家としてはお見事。


しかし、私個人の感想は、書評から想像していたような明るい希望を見出せるようなものではなかった。。。ちょっと期待していたんだけど。。。


そもそも、夫に尽くし子供を育てた専業主婦だからって、どうしてそこまで「孤独」なの?

友達もいなかったの?

「頭の中に大勢の人たち」って孤独ゆえの狂気でしょう。

「本当は独りがいい」って、嫌でも独りでしょう。

最後はやっぱり人と話したい、で孫の訪問で救われるって。。。


少なくとも、私の老後の希望にも参考にもならなかった。

子供も孫もいないもん。

ただ、どちらにしろ誰だって「孤独」なのよね。きっと。