資生堂の大規模な早期退職は2005年以来となる

資生堂は29日、国内で約1500人の早期退職を募集すると発表した。日本事業の従業員数1万3300人程度(2023年12月末時点)の1割強に相当する。特別加算金190億円を構造改革費用として計上する。新型コロナウイルス禍で落ち込んだ化粧品販売は回復しているものの、利益率は低迷しており、事業構造を見直す。

国内事業を手掛ける子会社の資生堂ジャパンで45歳以上かつ勤続20年以上の社員が対象となる。4月から5月にかけて募集し、9月30日が退職日となる。年齢に応じた加算金を通常の退職金に上乗せする。希望者には再就職の支援サービスも提供する。資生堂の大規模な早期退職は1000人規模で募集した05年以来となる。

資生堂は24年12月期に270億円の構造改革費用を計上する見通しだ。今回の早期退職もこの一環で、連結純利益を前期比1%増の220億円とする業績予想には織り込み済みという。

23年12月期の日本事業の売上高は前の期比9%増の2599億円だった。新型コロナ感染拡大前の19年12月期と比べると6割程度の水準にとどまる。コア営業利益率は日本が0.7%で、中国(2.8%)や米州(9.7%)よりも低い。日本事業の収益性の向上が大きな課題となっている。

現在は集客が少ない地域や店舗にも多くの美容部員や営業スタッフが関わっている場合がある。早期退職と並行して、ドラッグストアや百貨店ごとに完全に分かれていた人材配置を見直し、状況によって各販売チャネルで柔軟に勤務できる仕組みをつくる。商品数やブランドも膨らんでおり、国内の商品数のうち2割を25年までに削減する考えだ。

魚谷雅彦会長最高経営責任者(CEO)はかねて日本事業について「新型コロナ禍でインバウンド需要が蒸発し、本質的に何が重要なのか見つめ直す機会になった」とし、構造改革の必要性を言及していた。

資生堂にとって日本と並ぶ重要市場である中国事業も立て直す。23年は東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出の影響で中国での販売が落ち込んだ。セールに依存する販売手法や試供品の過剰な配布を見直す。

構造改革と同時に成長戦略も進める。米国では高価格帯の化粧品ブランド「ドクターデニスグロススキンケア」を買収した。皮膚科医の創業者が立ち上げたブランドで、古い角質や汚れを落とす技術に強みがある。今後の注力市場と位置づける米国での販売を伸ばす。


資生堂が日本事業で早期退職募集、約1500人