ジャニーズ幹部自殺の背景 変革の真っ最中に子会社社長なぜ社内で首つり

2018年3月16日 11:00

ジャニーズ事務所の子会社社長(62)が首つり自殺していたと、15日発売の「週刊文春」が報じた。

自ら命を絶つ場所に選んだのは、ジャニーズ事務所の関連会社が入居するビルとあって、ジャニーズのみならず芸能界に大きな衝撃が走った。

数々のトップアイドルグループを抱え、絶大な影響力を誇っている「ジャニーズ帝国」が揺れている。現在、改革の真っ最中の帝国にいったい何が起きているのか?

 文春によると、命を絶ったのはジャニーズの子会社アートバンクの代表取締役で、ジャニーズ・エンタテイメントの役員でもあったAさん。ジャニーズJr.がユーチューブに公式チャンネルを開設すると発表があった今月5日朝、事務所で亡くなっているのが発見されたのだ。

 Aさんが代表を務めていたアートバンクは、デジタルコンテンツの配信と著作権保護が業務の中心。取締役だったジャニーズ・エンタテイメントは、ジャニーズ事務所が設立したレコード会社で、グループ内でも中核の会社だ。Aさんはジャニーズグループの中でも、重責を担っていた幹部の一人だった。

 レコード会社などを経て2005年にジャニーズ・エンタテイメントに入社したAさんについて、ある関係者は「優しくて真っすぐな人で、責任感も強く人望も厚かった」と語っている。それだけに、なぜこのようなことになったのか、信じられない思いでいる関係者も多い。

見つかった遺書に、会社への不満や抗議などは一切見当たらず、上司への感謝の言葉もあったという。

 芸能界という枠を飛び越え「ジャニーズ」と言えば、いまや日本中で知らぬ者がいないほどの一大ブランドとなっている。強大な影響力を持っているのは確かだが、15年くらいから揺らぎが見えるようになった。

 発端となったのは、言わずと知れたSMAP解散騒動だ。16年の年明け早々に騒動が表面化すると、「SMAP×SMAP」(フジテレビ系=同年末に終了)で木村拓哉を除く4人が公開生謝罪。ジャニーズ事務所に逆らった人間をつるし上げるような手法は“公開処刑”とまで言われた。

「この強引なやり方には熱心なファンからも事務所への批判が噴出しました。これにはさすがのジャニーズ事務所も参ってしまいました」とはテレビ局関係者。

 結果的に木村と中居正広を除く香取慎吾、稲垣吾郎、草なぎ剛の3人が昨秋にジャニーズ事務所を退所し、国民的アイドルと言われたSMAPは一昨年末をもって解散となっている。

 長年にわたって昔ながらの手法を守り続けてきたジャニーズ事務所だが、現在変革の真っ最中なのは広く知られている。

 これまではインターネット上に所属タレントの写真掲載を認めてこなかったが、今年に入ってついに解禁。また前述のユーチューブでの公式チャンネル開設もその一環だ。「2月にはソニー・ミュージックエンタテインメントのSME乃木坂ビルを買い取り、本社ビルとする予定となっている。グループ内には多くの関連企業があるが、それらの統廃合も含めて検討している。藤島ジュリー景子副社長が中心となって、一連の変革の動きを進めている」と前出の芸能関係者。

 そんなさなかに起きたAさんの自殺――。最期の場所を会社のビルにした理由はいったい…。

 ジャニーズ事務所の所属アイドル、スタッフも大きなショックを受けている。盤石に見えた「ジャニーズ帝国」が大きく揺れていることは間違いなさそうだ。

【ジャニーズ事務所史】ジャニーズ事務所は、米国生まれのジャニー喜多川氏(86)が1950年代ごろ、東京・代々木にあった米軍家族住宅などの施設「ワシントンハイツ」内で野球をする子供たちを率いた「ジャニーズ少年野球団」が源流とされる。

 ワシントンハイツでは日本人の少年も野球を楽しみ、その一人だったあおい輝彦らがミュージカル「ウエストサイドストーリー」を見て感激したのをきっかけに、62年にあおいを含む4人組アイドルグループ「ジャニーズ」がデビュー。同年、喜多川氏によりジャニーズ事務所が創設された。

 当初は渡辺プロダクションと提携していた同事務所から、68年にフォーリーブス、72年には郷ひろみがデビューし、女性ファンを獲得。男性アイドルを自前で育てる事務所として評価を高め、75年に株式会社ジャニーズ事務所が設立された。社長は喜多川氏。

 80年代には「たのきんトリオ」と呼ばれた田原俊彦、近藤真彦、野村義男がブレーク。昭和の終わりにデビューし、一世を風靡した「光GENJI」や、平成になるとSMAP(本文参照)が爆発的な人気で国民的アイドルに。さらに「TOKIO」「V6」「嵐」などが次々とトップアイドルグループとなり、今日に至っている。

 芸能界における一大勢力となった同事務所はメディアにも大きな影響力を持つ一方、近年はファンクラブの運営に対する批判も寄せられ、昨年は会員規約の改定などが話題になった。

 就職情報ウェブサイトによると、資本金1000万円、従業員120人。売上高は非公開となっている。