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【wonkyu day2020】(ウォンキュ)

20201013 wonkyu Day!!!!!




『本当に綺麗だ』

遠征先のホテルの快適なベッドで寝転がった頭を撫でる掌の感触が気持ちよくて、うとうとしていた所に落ちてきた声。

「……でも失敗だ」

本当はオレ達の、大切なファンの為の色にしたかったのに。

「それでも綺麗な事には変わらない」
「あんまり繰り返されると却って嘘臭いですよ」

髪を撫でてた指が止まる。
ああこれはあまり上手い言い方ではなかったと気付いたけど吐いてしまった言葉は取り消せない。

最初は、年が近くて無条件で優しくしてくれるこの人が好きだった。博愛精神の塊。誰にでも分け隔てない愛は、ささくれだってたあの頃の自分には随分と助けになった。
好きだと思った。優しく抱き締めてくれる腕。頼ってもよいのだと思わせる広い背中。迷った時に導いてくれる掌。
勿論、ただの『兄』として。
その好きが、別の好きに変わったのはいつだったのかはもう思い出せない。
そう、いつだって彼は優しく頼り甲斐のある『兄』。
そして自分はそれに甘える『弟』。
それでも充分だった筈なのに。

一人で勝手に気不味くなって、眠たい振りをして瞼を閉じる。
自分を見る表情がどんななのか見たくなくて。
更に寝返りを打って背を向ける。
これで彼が部屋を出ていってくれれば良い。明日の朝になったら何事も無かったように振る舞うから。

「俺はお前に嘘はつかないよ」

つむじに軽いキスが落とされたのを感じた。

「おやすみ。明日も頑張ろう」

耳朶を軽く揉んで、気配が遠ざかっていく。

本当にこの人は


嫌になる位、優し過ぎて


好き過ぎて


「……どうした?」
「別に」

可愛くない言葉とは裏腹に兄のシャツの裾を掴む自分の指。
久々のコンサートで。
久々のこの国のスパショで。
お互いに疲れてるのは間違いないのに

「まだ、寝るには早くないですか」

年寄りじゃないんだから、なんて

「でも疲れただろ?」

疲れてはいる。しかもステージはあと二日間もある。

「……枕が」
「うん?」
「俺、枕が変わると質の良い睡眠が取れないんですよ。知ってるでしょ」
「そうだっけ?」
「……そうなんです」

本当は何処でも寝られる。

「そうか。じゃあどうしようか」

どうしようか、なんて言いながら此方に伸ばされる腕。

「抱き枕でもいいの?」
「それがいいです」

こんな風にしか云えない自分に笑顔で応えてくれるとか、本当に優し過ぎる人だ。
それが特別って事くらい知ってるけど。
逞しい腕に抱きすくめられる。

「キュヒョナ」

優しい声と体温に包まれて、素直に伝えられない気持ちも自分の体温と一緒に伝わればいいのに、と思った。




二日目のステージ上で
『本当に綺麗ですよ!好きだよ』
マイク越しと直接耳に響いた台詞は周りの歓声と共に記録用のビデオにもしっかり残っていて、一気に上がった体温と恥ずかしさで眩暈がした。


(了)


去年の(もう去年…!)SS8たまアリの初日夜という事で。またステージ上でいちゃいちゃするおふたりを拝める日が早く来ますように…!(祈)


【蜜月】(83)

【蜜月】(83/トゥギレラ)

蜂蜜の日
83の日



「なにこれ」
「貰った」

使い途無いからやる。半ば上の空の様な返事。夜中にふらりとやってきたと思えば、他人の部屋のダイニングであまり行儀が良いとは言えない姿勢でスマホゲームに熱中している。

「使い途って、」

以前よりは自炊をするようにはなったとは言え、蜂蜜を使うようなレシピは直ぐには出てこない。
小さな瓶に入った琥珀色を何となく照明にかざして見る。キラキラしたそれは見ているだけでおおよその味が想像出来たが、やはり直ぐに使い途は思い付かない。お菓子作りは範疇外だし。

「なんかあるだろ」

持ち込んで置きながら無責任な台詞に苦笑する。

「お前甘いものあんま好きじゃないのに」
「それをどうにかするのが腕の見せ所だろ。イトゥクシェフ?」

ゲームがひと段落したのか、此方に視線を寄越して、ニヤリと笑った。
コイツはいつもそうだ。
何かあると直ぐにこっちに投げて寄越す。だけど、絶対に出来ない事は選ばない。
信頼されているのかな、なんて自惚れるには充分な年月を過ごしてきた。
それはこれからも変わらない、と思ってきたけど。

「てか、ヒチョラ。お前こんなにウチに入り浸ってていいのか?」

これ、を渡すには自分よりも相応しい人の顔を知っている。
待ってる人が居るんじゃないのか?言外に訊ねても

「……いいんだよ」

多分本人は先程と同じテンションで返したつもりだろうが、声の感じが違うのに気付けないような付き合いの長さではない。
それがどんな意味の「いい」なのか気にはなったけど、今は肩を竦めるだけにして本人の言葉を信じる事にした。

「はい」

沸かしたお湯に蜂蜜とレモンの果汁。

「何これ?」
「喉、疲れてそうだから、取り敢えずそれ飲んで。その間になんか適当に作るから」
「おぉ!流石イトゥクシェフ!」
「煽たって大したものは出ないぞ」

いつもの軽口の応酬だ。冷蔵庫の中身を覗きながら

「どうせなら蜂蜜よりもなんか果物とかデザートにでもなりそうなの持って来いよ」

冗談のつもりで云うと、腕を引かれたと思ったら。
予感も情緒も何も無い、ただぶつけられた濡れた感触と温度。
いつの間に近付いていたんだろう。
ちゅ、と軽い音を残して、

「オレが来てやってんだから充分だろ?」

ニッ、と猫の様に眼を細めて、舌舐めずりをひとつ。
ああ、こういう所が、本当に、

「いいのか?」
「いいんだよ」
「甘い、な」
「そりゃあな」

蜂蜜の香りを仄かに香らせた、魅惑的な唇の形に視線を奪われる。
それがどんな「いい」のかは今は考えないで。
食事よりも先にデザートだなんておかしいけれど。
目の前の蜂蜜の匂いと白い身体を存分に味わう事にした。

(了)

【会話】(ウォンキュ)


【会話】


この人と会話をする時は口許か、手を見るのが癖になっている。
いつからだったかはもう覚えていない。何故なら

……目を合わせたらお終いな気がしたから。

あの真っ直ぐで嘘のない視線で見られたら、この心の奥底に沈めた感情を即座に引き上げられてしまいそうだから。
だから、この人とふたりきりで話をする時はどんな表情をしていたかはあまり記憶に無い。よく動く口と、軽く組まれた指先か、コーヒーカップを持つ仕草。そんな所ばかりはよく覚えている。
そして、

「キュヒョナ」
「……なんですか?」

つい、と綺麗な指先が自分に向かってくるのに気付くのに少し遅れて、指先が此方の唇の横に触れた。

「付いてる」

ふは、と微笑みながら其処を撫でて、茶色の破片が付着した指先を見せてくる。
食べていたドーナツのチョコレートの破片を拭ってくれたらしい。

「こどもみたいだな」
「……、」

何と答えるべきか迷って、視線を手元のドーナツと皿に向けたまま口の中に入ったままのドーナツを取り敢えず咀嚼する。食べながら喋るのは行儀が悪いから。

「かわいい」

思わずあげた視線が、ばちっと合わさった。
かわいい、って。
にこにこしながら頬杖をついてドーナツを食べる男を見てるけど、何がそんなに楽しいのか。
口の中のものを飲み込んでからアイスティーをひとくち飲む。

「……可愛くなんか無いですよ」
「俺には可愛く見えるんだよ」

そう、微笑む唇がコーヒーカップに隠れる。

もうおしまいかもしれない。
だって、ほら。
手よりも口許よりも。
真っ直ぐに此方を見る視線からもう眼が離せない。

「ねえ、キュヒョナ」

コーヒーカップをソーサーに戻して軽く組まれる。その綺麗な指先が此方に伸ばされる理由はもう無さそうだ。
ドーナツはもう食べ切った。
アイスティーはあとひとくち残ってるけど。

今度は何を云い出すつもりなのか。

かわいい、じゃなくて。
そうじゃなくて。
それ以外のもっと云うべき台詞があるんじゃない?
ほら、

好き、って云ってよ。

そしたら、もうおしまいにする。
自分も嘘のないこの沈ませたままの感情を曝け出す覚悟を決めるから。




「               」




(了)
























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