お風呂から上がるとやけに部屋がひんやりとしていた。


髪を乾かしてリビングに戻るとそこには彼女の姿は無い。


かわりにベランダの扉が空いていて、

決して広くはないベランダに置いてある椅子に彼女は腰掛けていた。


彼女の右手にあるアルコールの缶も相まってやけに様になっている。



「そんな薄着で外でたら風邪ひくよ?」

「うーん。」

「髪も濡れたままだし。」


ベランダの扉によしかかって彼女に声をかけるも、

彼女の瞳は私を捕えることもなく、そもそも彼女の耳に声は届いていないだろう。




人間どうしたって落ち込む日はある。

朝起きた瞬間から世界との波長がどこかズレていて、何をしても上手くいかなくて、うずくまってしまう日がある。


そうした時の彼女はベランダにでるのだった。


今あなたの目には何がうつってる?

今あなたの耳には何が届いてる?

あなたの肌は、鼻は、舌は何を感じている?

心の中で何色の涙を流している?



頬を掠めて吹き抜ける温度のない風が私たちから熱を奪っていく。



早く春が来ればいいのに。



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「頬を掠めて吹き抜ける温度のある風が……」の歌詞、なんか好きなんですよね。