花のない櫻を見上げて
ベタ物語
文才無さすぎ注意
10分クオリティ
リクエスト待ってます
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らしさって一体なに。
高校生らしく生活しなさい。お姉ちゃんらしく我慢しなさい。女の子らしく生きなさい。
毎週月曜日意味もなく通わされる心療内科。
精神科医の菅井先生はいい人だけど、
私はこんなとこに来る必要は無いのに。
「ありがとうございました。」
ここに訪れるようになってから1年。
何回、何十回みたか分からない病院の窓のそばに君はいた。
長く綺麗な黒髪。白い病院着と同じくらい透き通る肌。スラッた伸びた指。そして澄んだ瞳。
君はずっと窓の外にある葉のない桜の木を見上げていた。いつか美術館でみた彫刻のように綺麗なその姿に僕は見とれてしまったんだ。
「あのっ!……櫻のつぼみあるの?」
「……ないですよ。」
「ないんだ…………じゃあなんで?」
「秘密です。……もう、こんな時間。戻らなきゃ。…さようなら。」
「………僕、また来週くるんだ。だからまた会えませんか?」
「………考えておきます。」
去っていく後ろ姿も綺麗で、そして今すぐ消えてしまいそうなくらい儚かった。
今週も憂鬱な日々が始まる。
先週あった少女と会うのはあまり期待しないでいた。期待するだけ嫌な現実が浮き上がって帰ってくる。
「ありがとうございました。」
菅井先生に別れを告げドアを開けると
ちゃんとこの間の少女が窓際にいて
同じように寂しい櫻の木を見上げていた。
「来てくれたんだ。」
「……はい。どうせ暇なんで。」
「……あ、僕はてちって言います。あだ名だけど。」
「てちさん。私は天です。天国の天。」
「天ちゃん……可愛い名前だね。」
「てちさん。櫻を見たことはありますか?」
「櫻……?うん、あるよ。」
「櫻って本当にピンクなんですか?」
「うーん、ピンクというよりは白に近いかな。
……天ちゃんは櫻見たことないの?」
「ないです。これまでもこれからも。」
「私、さくら病なんです。」
「さくら病……?」
初めて聞いた。世界に数人しかいないらしい。
さくらの1輪目の咲き始めから最後の花びらが散るまでの数週間、天ちゃんは外に出られない。
「もし外に出てしまったらもしくは本物の桜を目にしてしまったら私の体は櫻の花びらになって散ってしまうんです。」
「え…………。」
「驚きますよね。……気持ち悪いで「気持ち悪くない」」
確かに驚いた。だけど気持ち悪いわけが無い。
人は簡単に気持ち悪い、変だ、普通じゃないなんて言うけれど何を基準にそれを言うのか。
「お母さん、わたしいや僕は男の子なんだ。」
皿の割れる音が聞こえる。あぁ唯一信頼していたお母さんも「あっち」側だったのか。
「友梨奈、嘘でしょう?!嘘って言いなさい……あら、今日はエイプリルフールだったかしら、友梨奈嘘だよね?」
床に散らばる皿の破片なんて気にとめずに
私に縋るお母さん。
「ねぇ天ちゃん、らしさって一体なんだろうね。」