だけど、まだ、降っていなかったので、
歩きに出た。
でも‥
やはりと言うか、
当然のように降りだす‥
傘は持っていたが、表町アーケードに避難‥
ここで‥
あいつを見掛けた‥
Kちゃんとは前職の同期だった。
僕とは全く正反対の性格だったが、
なぜかウマが合った‥
出会った時、Kちゃんは20歳で僕が22歳‥
だけど‥
幾多の修羅場を潜り抜けてきたらしい
Kちゃんの風貌は、
年下とは思えない迫力があった。
ヤンチャでいつも母親を泣かせていたと言う
Kちゃんの自宅へ何度かお邪魔したが、
母親は僕を見て‥
「こんな普通のお友達もいるのね」
何だか安心した‥と言っていた。
母親は、
「ヤンキーしか遊びに来ないの」
と困った顔をして見せた。
付き合い始めは実は彼を警戒していた‥
あまりにもタイプが違うからだ。
しかし、
同じ職場で苦楽を共にして、
ある時は助け合い、
飲みにも行ったりしている内に、
彼の性格の良さがわかり次第に互いの家へ
行き来するまでになった‥
当時、
僕がひとり暮らしをしていた
後楽園周辺のアパートにKちゃんは
よく泊まりにきた。
特に何をするでもなく‥
話す内容と言えば、
しょうもないことばかりだったが、
夜が更けるのも忘れて語り合ったものだ‥
そんなある夜‥
Kちゃんから車でどこかへ行こうと誘われた。
当時の僕は車はおろかバイクどころか
自転車ももっていなかったので、
とうぜん行く‥と言った笑笑
車種はKちゃんご自慢ツライチのセドリックで、
本人の提案で鳥取砂丘へ行くことになった。
Kちゃん曰く‥
昔、数台のバイクで行ったことがあったが、
地元の暴走族とトラブって、
砂丘をちゃんと見ていないと言う‥
その後、車で彼女と二人リベンジに訪れたが、
Kが来る‥
って情報がどこからか漏れたのか‥
(って、あんたそんなに有名だったの!?)
バイク数十台の地元の暴走族に
砂丘の入口で囲まれ、
その中でいちばん強そうな奴をくらわして、
周りが怯んだ隙に命辛々逃げて帰った‥そうです
その余韻か走っていてもトンネルに入ると、
「パラパッパラパ~ッ♪」
この「~ッ」て余韻が好きなんっすよ~、
ってひとりで悦に入っていた‥
夜明け前の鳥取砂丘に到着し、砂丘の先まで行き
男二人で夜明けを待った‥
「何が悲しくて、
男二人でこんな所にいるんだろう」
Kちゃんは冗談半分にそう言った。
「彼女と来れば良かったのに」
と言う僕にKちゃんは苦笑いを浮かべた‥
Kちゃんには彼女がいたが、
最近会っていないみたいなのだ。
砂丘から太陽が昇りはじめる‥
砂の色がグレーからライトグレーに変わる様を
眺めながら、
Kちゃんは言った‥
「帰ったら構ってやろうかな」
「それがいいよ、いい娘じゃん‥」
Kちゃんの彼女とは何度か会っているが、
本当に細かい気遣いの出来る可愛い女性だった‥
帰路はさすがに眠かったがKちゃんの
武勇伝の数々を聞くと眠気も吹っ飛んだ。
そんなKちゃんだったが、
上司と反りが合わずに退職し、
新しい会社で先物取引の営業になった。
「300万円の売上を出すと正社員なんです‥
‥彼女と結婚したいから頑張らないと」と、
彼は言う。
その後、かなり頑張って正社員になり、
営業成績も上位にランクされているらしかったが
先物取引でも基本は現品を用意出来る状態に
ないと破綻するのは素人でもわかる‥
どんどん紙切れ一枚で商品を売り上げている
Kちゃんに、
「じゃあ、顧客が商品を渡してくれ、と
言ったら渡せるのか?」と聞いたら、
「それは無理だ」と言う‥
一抹の不安を感じていたが‥
やはり‥
その会社は大きな社会問題になり破綻した。
社員たちもその強引な営業方法は
罪に問われたようだ。
その後Kちゃんは僕の前から完全に姿を消した‥
それが‥
今日の表町アーケードで今まさに
擦れ違おうとしている‥
僕は、涙を流しそうになりながら、
声を掛けようとした‥
その時‥
あれから数十年の時が
流れているのに気がついた。
あの時のままのKちゃんが
いまここにいるわけないのだ‥
僕は半泣きで擦れ違った‥
確かにKちゃんだったが、
長い風月は彼を別人に変えているんだろうな~‥
表町アーケードの先から見た空‥
雨は更に激しさを増していた。
