KAZEの旅人
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ロードサイクルに跨がった男がこちらを見ていた













何をしよるん?

唐突に声をかけられた。








いや、ちょっとウロウロと‥








まるで知人にする返事だが、

知り合いかなと一瞬勘違いするほど
親しげな表情でいきなり話し掛けられたので
反射的にそう返していた。








だが、すぐに知らない人だと気付き‥








慌てて‥

旅の途中なんです」と言い直した。








それを聞いて、彼は堰を切ったように
話し始めた。








過去に自転車で旅をしていたこと、その際、
各地で様々な人達にお世話になったこと‥

だから「旅人を見ると放っておけない」と言う‥








そして、

今夜の宿は?」と聞くので‥








山口ユースホステルに予約を取ってます‥

あそこのペアレントは友達だから、
電話しとくから、今日はうちに泊まれ








言い方はぶっきらぼうだがその表情には
優しさに満ち溢れているように思えた。








明神と名乗った彼はその場で
山口ユースホステルに電話をして、

後輩だから今日はこっちへ泊めるから、
と言ってくれていた。








実は少し残念だった‥








山口ユースホステルは当時、
ドリップで淹れたコーヒーを飲ませてくれる
ユースホステルとして有名で、

今夜はそれを楽しみにしていた‥

でも、後日、ちゃんと飲みに行きました♪








ってか、今夜はそれどころじゃない
歓迎を受けることになるのです‥








明神さんはとりあえずそのデカいリュックを
始末しよう‥

と物騒なことを言って、ロードサイクルを
押しながら自分のアパートまで連れて行き、








僕を身軽にして、








さあ繰り出そう‥と

場末のスナックってこれじゃん」と声高に
言いたくなる店に僕を連れて行って、








そこのママに「僕の後輩だよ」と紹介した。








ママは「いらっしゃい、
この人、やたら後輩が多いのよ

と皮肉たっぷりだが、
親しみを込めた口調でそう言った。








今日はあいつも呼ぼう‥そうだあいつも‥

と、次々に電話を掛けていた‥








やって来た人たちは‥清水です‥伊藤です‥
吉川です‥と、
何だか聞き覚えのある名前ばかりだった。

飲みながらの会話も国を憂う話題ばかりで、









別れ際にはみなさんから連絡先を教えられ、
また来いよ、と言って頂いた。








明神さんから明日の予定を聞かれたので
錦鯉を見に津和野へ行きます」と言うと、

じやあ僕も津和野まで付き合うよ」 
と言ってくれた。








アパートに帰っても酒盛りは続き、
結局明け方まで二人で飲んでいた‥








翌日、明神さんは「ロードサイクルで行く
と言うので、
じゃあ僕は電車で行って待ってます
と言った。

かなり時間が余るだろう‥と高を括っていたが、








電車からおりて驚いた‥












明神さんは汗ひとつかかずに涼しい顔で
津和野駅前にいた‥