サントリー美術館へ。 | 日本画家 榊山敬代 オフィシャルブログ 人生こんなもん。Powered by Ameba

サントリー美術館へ。


昨日は六本木はミッドタウン
サントリー美術館へ。。

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そろそろアトリエへこもって
制作もはじめたいのですが
なんとなく気分はソワソワと
美術館へと誘われてしまうこの頃です

そして最近…観たい見たい視たいと
吸収したい時期なのでしょうか
そのような時期も珍しく
今の自分に素直に従ってみようと
美術館へ向かいながらも美術と自分と
見つめているような師走のおわりです

さて サントリー美術館では

〈小田野直武と秋田蘭画〉
世界に挑んだ7年

只今開催中です。。

さて 本展の舞台は
江戸時代半ば18世紀後半…

江戸時代の絵師
小田野直武さんが主人公として展開されておりました

小田野直武とは…

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32歳という若さで
この世を去ってしまうのですが
江戸へ出てきて7年という短い歳月の中
新たな画風へと挑まれた作品の数々をたどれる展示となっておりました

小田野直武さん…しらないなぁ…

という方も この絵なら知っているでしょうか… 

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〈解体新書〉です

実はこの解体新書の絵師が
小田野直武さんなのです

ところで 本展のタイトルにあります
〈秋田蘭画〉とは
あまり耳にされないかんじですが
きょうは秋田蘭画について
日本美術のひとコマをつづっておきたいとおもいます

まず〈秋田蘭画〉のいわれは
〈秋田〉藩士が描いた
阿〈蘭〉陀風(おらんだふう)の絵〈画〉を意味します

秋田蘭画の背景には…18世紀にて
日本はキリスト教が禁じられ鎖国の状況の時代のなか…唯一オランダと中国との貿易が長崎から行われていた時代でもありました…やがて漢訳された西洋の書物などの輸入がゆるされると…西洋の文化や学問が研究された〈蘭学〉が盛んになります…

これらの輸入をゆるした
徳川幕府八代将軍吉宗は
油絵の輸入もゆるされた時
とのことでして
日本美術にとっては新たな風が吹き込まれた時代のようです

さて…若き絵師小田野さんが25歳の時
本草学者の平賀源内さんと出会います

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日本のダヴィンチとも言われていた
平賀源内さんは当時46歳とのこと
小田野さんの若き画才へ惚れ込み
源内さんは洋書の挿絵や銅版画など
西洋の新しい書物を通して小田野さんへ
西洋画の技法を学ばせる環境を提供され
やがて秋田蘭画を生み出す芽をあたためてゆくのでした 

それは 西洋画独特の
遠近法の構図や物に陰影をつけた
立体感のある表現などですが
当時では見たことの無い新しい表現の絵画でした

また 興味深いのが
享保16年…長崎にて
沈南蘋(しんなんぴん)さんという
画家が中国から派遣されてきました

沈南蘋さんの画風は
リアルな描写と陰影のキリッとした
濃密な色づかいが特徴で
〈南蘋派(なんぴんは)〉と呼ばれ親しまれ その新しい画風は全国へ広まり…

やがては 京都へ…

伊藤若冲さんや与謝野蕪村さんも
南蘋派の影響を受けているとのことです

今こそは 伊藤若冲さんは有名ですが
小田野さんと若冲さんは同世代。。

若冲さんはまだこの時代は画業に専念されていない歳でもありましたが
小田野さんが もしも80歳まで生きていたなら
若冲さんのような新しい画派を確立しながら活躍されていたのかなぁ… 
やはり画家は長生きしてこそかもしれません

本展では
その南蘋派の作品も展示されていたり
小田野さんと共に秋田蘭画を発展させた
秋田の若きお殿さま…佐竹渚山さんの作品も合わせて一望することができます

そして 
小田野さんが 江戸へきて7年…

自らの美を咲かせはじめるころ
突然謹慎を命じられ故郷へ帰り

その年に なんと 平賀源内さんは
殺人罪を問われ獄死。。

謹慎中の小田野さんは
源内さんが亡くなった翌年に
32歳という若さで他界されますが
死因は謎に包まれているとのこと…

さらに不幸は連鎖のようにつづき
共に秋田蘭画を発展させていた
若きお殿さまの佐竹渚山さんも
小田野さんの死後 5年後に38歳という若さで亡くなり

秋田蘭画へ関わった主要な三人が
相次いで美術の世界から消えてゆき
秋田蘭画が再びスポットライトを照らされるのは20世紀以降となるのでした

秋田蘭画の歴史とは
なんとも もやもやと…
まるでミステリーのようです

その もやもやは 実は会場に入ってから
なんとなく漂っていたのは不思議でして
このもやっとしたかんじは何だろう…と
作品を見つめていたのですが

昨日から1日経ってふと感じましたのは
秋田蘭画の雰囲気はまるで
産まれたての赤ん坊のようにもかんじてくるのでした

それは 産まれたばかりの秋田蘭画を
さて これから…と追求される前に
突然ヒカリが消えるように
シャッターが降りてしまった静けさは
昇華しきれていないエネルギーの余韻が
作品から放たれては消えてゆき…それは
未来へ行きたかった夢を感じるように
作品はその現実を正直に映しているのかもしれません

…と この感想は
画家な眼差しとして観えてきたひとコマなのですが。。

もうひとつ 
珍しいなぁ…と思いました見所では

絹本油彩 という
秋田蘭画ならではの素材の組合せの工夫や
逆に油絵のような質感を目指した質感など
日本画の素材を用いながらも
新しい質感を追求されている部分も興味深いです

きょうは小田野直武さんと
秋田蘭画のひとコマな流れまでとなりましたが

展示では
他にもあらゆる角度からたのしめるかんじでして
ささやかに富士山…鷹…岩に牡丹図という
おめでたいモチーフの作品も勢揃いですので

新年にむけて…または
新年はじめての美術館としても
縁起のよさそうな展示となっておりました

会期は
2017年1月9日(月/祝)までです

IIIII サントリー美術館


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