不思議な冷蔵庫。第1話 | 日本画家 榊山敬代 オフィシャルブログ 人生こんなもん。Powered by Ameba

不思議な冷蔵庫。第1話


きょうの東京は
しずかな曇り空

光も風もない

無色な空を背景に
そびえたつ木々は

じっとこちらを見つめているようで

おもわず
わたしも

目をそらさないようにと
木をみつめているように

そして 

木の葉がフワッと揺れるとき
ふと現実へと戻る合図の如く

パチクリパチクリと
まばたきをおもいだすように…

まばたきとまばたきの間には
我をとりもどすような時空を

となえているかのようです。。

…と、相変わらず

いつもの景色のなかで
あらゆる情景を刻んでいるさかきやまさんです。

さて

お久しぶりなブログとなりましたが
みなさまいかがお過ごしでしょうか

気がつけば
なつやすみ

あまり実感がわかないのですが。

毎日なにかとバタバタしていて
一日があっという間に過ぎてしまいますから
ブログもなかなか開かず仕舞いなこの頃でございました…

そして

今朝は夢から覚めるなり
そうだ、ブログを書こう

…と、

夢のつづきを見上げながら
つづっておきたいおはなしたちが
うつらうつらと天井に浮かぶのを眺めながら
起き上がるのでした。。


さて今回のおはなしは

すこし 奇妙な
おはなしです。

夏に奇妙な物語といいますと
すこしゾクッとしてくるものですが…
…大丈夫です。

全く怖いおはなしではございませんので
ご安心して読みつづけていただけたらと
…おもいます

物語のはじまりは住まいを移動して
一ヶ月と数週間を重ねていくなかでの
ほんのささやかな出来事です。

それは今までに巡りあわなかった
不思議なことがつづいているので
すこしつづっておきたいとおもいます…

…と その前に   

おはなしが長くなりそうなので
きょうは第1話と区切りまして
つづりたいとおもいます…

…東京へ身を置いてから
かれこれ15年程の月日のなかで

半年だけ女子寮生活時代もありましたが
今回の引越しは3度目と

あまり住まいを移動してこなかった
東京人生です

そんな東京人生な景色のなかで

たとえば家具や家電などは 

全くお金をかけずに
必要最小限の生活と
絵が描ければ有難や…
そのような優先順位で
東京時間を重ねてきたわけですが

気がつけば30代も半ばへと
さしかかるこの度の引越しでは

ふと おもうことがあるのでした。
上質な生活とはなんだろう…
上質とはあらゆる幅があるなかで
まずは毎日触れるモノへ焦点を絞ってみることにしてみるのでした

そこで浮かんできたキーワードは

家電

今まで全く気にかけてこなかった存在でしたが
先日の断捨離にてあらゆる家電とお別れするとき
もうこれだけつかったのだから
次は良いモノへバージョンアップしたいなぁ…
そのような眼差しへと
塗り替えられていたのでした

そこで あらゆる家電のなかでも
最初に浮かんできたモノとは…

長方形で扉がついていて

扉を開くとヒンヤリしていて
氷も作ってくれる四角い存在

その名前は冷蔵庫さん

珍しくもあたらしい冷蔵庫の世界を
のぞいてみたいという好奇心がはじまるのでした

そもそも冷蔵庫さんとは
わたしにとってささやかな思い出の箱といいましょうか…

絵をつくることしか興味がなかった20代
食費にお金をかけられなかったこともありまして
あまりお料理を大切にしてこなかったなかで

30代の震災以降

都内では食材が手に入りにくくなったうえに
原発の影響などで外出を控えた生活がつづいていた時のこと

冷蔵庫に残っている食材で
工夫して作ってみることの

楽しさと発見を教えてくださったのは
震災の時期だったことをおもいだします

この冷蔵庫に入っている食材で
一週間の献立を考えてみよう。。

この調味料とこの調味料があれば
こんなバリエーションができる。。

四角い冷蔵庫は四角いキャンパスと対話するかのように

色々なアイデアを教えてくれる
不思議な扉となっていくのでした

やがて

お料理ってたのしいんだ…
カラダに良いものつくりたいな…
明日のお料理がたのしみだな…

絵を描くように
お料理の制作が

同じような感覚へと変化していくのでした

そうしているうちに気がつけば
風邪をひかない丈夫な体質になり
体型も20代よりややスリムに変化して
肌の細胞も丈夫にいれかわったようで

改めて食事の大切さを
実感しているこの頃です…

そのようなわけで
食と対話する窓口なる冷蔵庫さん。。

新たな住処では新たな冷蔵庫へ
こだわってみようと家電ショップへ
足を運んでみるのでした。。

こんなにも東京にいて
一度も冷蔵庫を見たことがなかったので

あらゆる冷蔵庫たちが
ドーンとズラリと並んでいる風景は
シュールな光景でした。

冷蔵庫さんひとりひとりを
眺めては開けたり閉めたり

へ~…
ォぉ…
わァ~

冷蔵庫は冷やすだけではなく
機能が進化していることに
ただ感動の連続なのでした 
種類がありすぎるうえに
どの機能がよいのかと
これはとてもじゃないけど選べない…

…と 見渡したとき

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ピタッと目が合う冷蔵庫さんが立っているのでした

冷蔵庫なのに冷蔵庫らしくない質感
現実のモノなのに未来を感じる素材

この子がほしい…

迷わずヒトメボレをして近寄り
店員さんに色々訪ねてみるのでした

扉はワンタッチで自動に開いたり
ピーと撫でると両扉が開いたり
最初は目が点・・になりましたが
現代の技術とアイデアに感動するのでした

冷蔵庫のなかでは実験がされていて
一週間まえの食材が長持ちしていること
ロールケーキがヒリヒリにならないこと

外見はクールですが
内面では食材想いの

優しい冷蔵庫さんの世界へと
さらにひかれていくのでした

…やがて

引越しの日。。
予定では荷物を運んでから冷蔵庫さんを
迎える予定でしたが

急きょ、引越し業者さんが3時間も
遅れるということになり
新しい住まいへ一番のりにやってきたのは
この冷蔵庫さんとなるのでした。

2人がかりで運ばれてくる冷蔵庫さん
ピカピカと神々しくかんじる光景には

一瞬、やっぱり贅沢だったかなぁ…
今のわたしには不相応だったかなぁ…

はじめてこだわってみた家電でしたが
いざ日常の入口にいらっしゃったとき
あらたまるような戸惑いに
背筋はただただ伸びていくのでした

やがて…

…ピ…と

電源が灯ったとき
あたたかに眠っていた四角い箱は
ヒンヤリと目を覚ましていくように

冷蔵庫のあたらしい人生が
はじまっていくようでした

…はじめまして…どうぞ…
よろしくおねがいします…

食材の不在な冷蔵庫の片隅へと
新鮮なキモチも保存するように

扉をゆっくりと閉じるのでした。。

…つづく。

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