つくるということ。 | 日本画家 榊山敬代 オフィシャルブログ 人生こんなもん。Powered by Ameba

つくるということ。



きょうは
ようやく

名古屋へと嫁ぐ
オーダー作品を

ギャラリーへ届けてまいりました。


この度

オーダー作品として

作品を描くことになりました
きっかけとは

とても

不思議な巡り合わせから
はじまったのでした…



…先月のこと。

わたしは

名古屋は
松坂屋の美術画廊の応接間にて。

個展をきっかけに
オーダー作品をご依頼くださったお客様と

一時間程の
打ち合わせをしていました。

やがて
おおまかな打ち合わせも終わり

画廊から
お客様をお見送りしたのでした…

そして

画廊の奥の事務室にて
担当者の方々とお話を
交わしていた時のこと…

画廊にて受付されていた方が
わたしを探しているご様子でしたので

たずねてみますと…


「先生のファンだとおっしゃる方が受付でお待ちです」

… はい

一瞬 。

おどろきながらも
早足で受付へと向かったのでした。。


すると

受付にて
お待ちしていらっしゃった方は

笑顔の明るい
年配の男性と
娘さまでしょうか…

穏やかな雰囲気のおふたりが
迎えてくださったのでした。

そして
近寄り会釈をしますと


「ぃや~先生
お呼びしてすみません…

先ほどね、こちらの画廊へ歩いてましたらね

夏に個展されてたあの時の先生が

サーっと

歩かれて行くのが見えましてね

ふたりで、あの時の先生よ先生よって

急いで追いかけてきたんですよ…!」


…!。


…それは
それは…

よく見つけてくださいましたねと
わざわざ足を運んでくださったことへ
お礼をかえしますと…



「…それでね

先生の個展を観させていただいた時…

一番、欲しかった作品が
既に売約済みでしてね~…

とても欲しかったので

できれば
同じような作品が依頼できないか、

受付の方へたずねたんですよ…

そしたら
その時は

同じ作品は受付けていないですと
断られてしまいましてね~

それがなんだか残念で。

じゃ、もう、いい!

って、子供みたいに画廊を後にしたんですよ…

そしたら
後になって、

芳名帳に名前書くのも忘れたし

先生のDMさえ
いただくのを忘れたことが

後から後から
しまったな~って

おもいましてね…

そうしたら!

偶々、先ほど
先生を見かけたので

せめて私共の住所をお渡しして
今後の情報を送っていただけないかと
声をかけさせていただいたんです…」


…そのようなひとコマが

わたしの知らないところで
流れていたなんて

作品を気に入ってくださった
あたたかなご感想には

背筋が伸びるおもいでした。


ところで
この度の個展では。

おふたりが
気に入ってくださった作品をはじめ…

個展初日の午前中に
売約済みが決まってしまう作品がありまして

早くいらっしゃった方が
優先というかたちになり

後からいらっしゃった方からは
欲しかったのに残念だったという声も
いただきましたので

作品とお客様との
出会いとは

運命とでもいいましょうか…

貴重な巡り合わせです。


そのようなことを
めぐらせながら…

住所をつづるおふたりの
後姿を眺めていましたら

わたしは
とっさに

おふたりへ
声をかけてみるのでした。


「あの…

こんなに作品を気に入ってくださってたなんて、今日まで知りませんでした。

もし よろしければ…

お気に入りいただいた作品と
全く同じ作品は描けないのですが

同じモチーフで
近い雰囲気の作品をおつくりすることはできるのですが…」


…そうして。

このひと声がきっかけとなりまして

この度は
オーダー作品として

おふたりのために
作品を描かせていただく運びとなったのでした。


やがて

打ち合わせのとき。

作品を飾りたい場所の風景を
お聞きすることができたのでした…


「私どもの病院のね、

これくらいの幅の壁に
この作品を飾りたいんですよ。

そこの壁では…

よ~く、患者さんと立ち話をするんでね~…」

おふたりは
歯医者を営まれているとのこと…

患者さまと憩う
ほほえましい光景が

わたしの目の前に
広がってくるのでした。


この時

わたしが。

というよりも

眼差しは
小さなお子様だったり
おばあちゃんだったり
と…
病院をたずねる
患者さまや病院を営まれている
おふたりの眼差しへと
入れかわるのでした。

そうしますと
どのような作品をつくればよいのか

迷いは消えていくのでした。


わたしは
いままで

オーダー作品を何点か
つくらせていただく機会に
巡り合っているのですが

つくる
とは

こういうことなのかなぁ…



ひとつのものづくりの視点として
気付きをいただくことがあります。


それは

つくることの根底に。

わたしという主体は
さておき

作品を届ける相手の風景へ
おもいやりなる眼差しを
たいせつにしたいとおもうのです。

けれども
その眼差しとは

相手に媚びるというような
機嫌をうかがう視点ではなく

相手へおもいをはせますと

自分ひとりでは決して生まれない
相手が居るからこそ出会える
あたらしいアイデアがひらめくように…

たとえば

歌手がライブをする時も

聴いてくださる方がいるから
ヒラメキのアイデアが湧いてくるように…

つくる
とは

自分自身との孤独な
時間であることに

変わりはないからこそ

つくるモノの先には。

誰かを
世の中を

大きくいうならば
地球をも

おもいはせていけるような

そのような
ものづくりな時間を

時には
心に問いかけてみたいものです。。



photo:01



こちらは
この度のオーダー作品の

一部です。

忘れな草がモチーフなのですが
直径一センチ弱の花々が
散りばめられているなかに

三センチ弱ほどの
虫さんをしのばせまして…

とても小さな世界ではありますが
楽しんでいただけたらなぁという

ささやかなひとコマを
描かせていただきました。

画像に載っていないところにも
小さなとあるモノを描いたのですが…

気付いてくれるでしょうか。。




…そのようなわけで。

つくることに
至るまでには

そのモチーフを理解するべく
そのモチーフのキモチを知るべく

オーダー作品の場合は
お渡しする状況も知るべく

いろいろ取材したり
モチーフにまつわる資料を
あらゆる角度から調べたりするのですが


さて
これから。

11月までの課題のなかにて
描かせていただくオーダー作品のなかでは。

モチーフのイメージが



にまつわるテーマがあるのですが。

ご依頼くださった方のおもいは

海のすべてを愛している方へ
作品を贈りたいとのこと。。

ところで
わたくし。

あまり海に馴染みが無いので
アタマで考えてみても

経験が乏しいので
想像力不足といいましょうか…

考えていても
なにも浮かんできませんでしたので

今年の夏のあいだにと
日焼け覚悟で勇気をだして

全身海水のなかへ…

…まさかの全身とは
小学生依頼の体験となりましたが

おおきな海を
知るのでした。。

この感想は
またどこかでつづっておこうとおもうのですが。


…このように

オーダー作品という
相手からのイメージがはじまりで

自分のなかでは知らなかった
あたらしい自分へ出会えることも

経験が導いてくださる

貴重な人生です。


こんなふうに。

ちっぽけな自分が

誰かとの出会いで
新しい体験をして

そうしたカラダで
ものづくりを重ね

そうしたモノが。

また新しい出会いを呼ぶことができたなら

そんなふうに。

そのようなキモチも忘れないように

つくることを
つづけていけたらとおもいます。



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