ピアノに恋した日本画家（第三話）。
つづき・・・
ジングルベール♪
♪ジングルベール・・・
街は・クリスマス。
いつもなら・らくがきができる・広告の裏 まで。
クリスマスの おもちゃ・おもちゃ・・・
おもちゃが恋しくなる・季節 がやってきました 。
少女と・いもうとたちの・サンタさんは。
毎年・２６日の夜に・やってくるのでした。
プレゼントを あけるのは ２７日 です。
なぜなら・ピアノのコンクールの開催日は。
冬休みに入って・クリスマスの前後 に行われるからです。
いもうとたちも。
おねちゃんのコンクールが終わるまでは。
サンタさんへのおねがいを・がまんしてくれるのでした。
小学生５年生・６年生の頃 。
少女は・あいかわらず 信じるまほう を
心がける日々。
松坂町３丁目の夕方 。
ピアノの音と共に・おひさま が 沈む日々 。
近所迷惑にもなりつつあった
少女のおうち。
そんな なか 。
増改築の時期に合わせて
パパとママが用意してくれた・ひみつのお部屋がありました。
重い扉を開けると。
そこには・夢のグランドピアノ が待っていたのです。
防音室 といって・ガラス窓は二重になっているようです 。
夢の グランドピアノ。
今は亡き・よこはまのおばあちゃんが
がんばる少女姉妹に買ってくれたのでした。
あたらしいお部屋と
あたらしいピアノ。
お休みの日は・６時間 練習することもあります 。
しかし。
少女のむねのあたり には 夢 と 現実 に
もやもゃ 。。。。
弾いてみては・首をかしげてみたり。
弾きつづけてみては・泣いてみたり。
イメージが ふくらめば・ふくらむほど。
苦しく感じる じかん が・長くなってくるのでした。
コンクールの結果。
銀賞まではとれるのに・金賞が なかなか とれません。
審査員の・講評用紙には。
「 練習はよくしていますが・・・ 」
・・・。
練習してるもん 。
間違えないで弾けたもん 。
あの子は間違えたけど・どうして金賞なの ？
だれからも聞かれない・閉めきった 防音室で
少女は・メソメソ・・・泣くのでした。
やがて・中学生。
ピアニストになりたい少女は。
吹奏楽部 でも なく。
美術部 でもなく。
迷わず・弓道部へと入門します。
毎朝・夕方・部活がはじまるまえは。
ジリジリ照りつく太陽の下 。
広い 校庭を１周。
腕立て・腹筋・スクワット ３０回。
このコースを ３セット。。。
苦しいように・見えるけれど。
少女にとっては・ピアノの悩みが忘れられる・唯一のじかん。
ヘトヘトになってからピアノの練習というよりも。
机の上でよく・寝てしまうのでした zzz 。
厳しい中学時代。
コンクールへは 出場しなくなりました。
しかし・少女は お勉強が得意ではない トラウマに あおられて。
ピアノだけは・特技として 努力するのでした。
少女は・ベートーベンがだいすき。
ベートーベンの 感情的な 音色に
やがて 恋 をします 。
中学一年生の ベートーベン。
発表会で弾いた曲は「 月光 」
第一楽章。月に遠くおもいをはせる音色からはじまり・・・
軽やかな・二楽章。
・・・地上を這う・情熱的で 電気のように走りとばす・第三楽章。
中学二年生の ベートーベン。
発表会で弾いた曲は「 悲愴 」
第一楽章。頭の上に悲劇が落ちてきたかのような絶望の音色からはじまり・・・
第二楽章。おもわず・涙があふれる おだやかで・母性に包まれる 音色。
そして・素直なきもちになってコミュニケーションを奏でる 第三楽章。
ピアニストを夢みる少女は。
人を癒すために・弾くのでもなく。
じぶんのために・弾くイミもわからず。
ただ・ベートーベンと共に。
おなじ キモチ になってみるのでした。
夜の 洗面所 。
キラキラした目の・少女は もう いません。
鏡にうつるのは。
もゃもゃした 少女が ひとり。
「わたしには。ピアノ の才能なんて ないんだ 。。。」
進むべき道と信じていた・ピアニスト。
ピアニストのタマゴ には
亀裂が かすかに 浮んでいるのでした。
さて。ピアニストを夢見る少女の行方は・いずこ・・・。
次回は最終回 。つづく・・・
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