第 四 章    コ リ ン ト 人 の 恋  -10-

 

 

峠の展望所に、ふたりきり 。 静かだ 。 風も凪いでいる 。

 

良介は、これから起こるであろうことに思いを巡らせ、落ち着かない 。

静かなのが、今はかえっていたたまれない 。 かと言って、適当な言葉も思いつかない 。

 

・・・緊張してきた 。 胸がドキドキする 。

直樹も同じなのか、やはり無言のままだ 。

 

ギ― 。 サイドブレーキを引く良介 。

 

その手に、直樹の右手が重なる 。

『 ・・・良介さん・・・ 』

「 ・・・直樹・・・ 」

直樹の手を握り返す良介 。

 

『 ・・・僕、あの・・・ 』

「 うん 」

『 僕、・・・良介さんに、その、・・・触りたくて 』

「 あ、・・・うん 。 俺に、・・・触るんだね 」

『 ・・・はい 。 ・・・良介さんが、嫌でなければ・・・ですけど・・・ 』

「 嫌じゃないさ、勿論 」

『 いいんですか ?』

「 うん、いいよいいよ 。 俺だってさ、ず~っと、直樹のほっぺたに触ってみたかった 」

『 あ、・・・あの、僕、・・・ 』

「 ン ? 」

『 ・・・・・・その、つまり 』

「 ・・・・・・? 」

『 ・・・その、良介さんの・・・ズボンの上からで、いいんで・・・ 』

 

エッ !!

” ズボンの上から ” ? ・・・ズボンの上から って、・・・・・・、そういうこと ?

・・・そういうことなんだ・・・。

・・・直樹、・・・大胆だ 。

・・・俺、・・・俺は・・・ 。

 

「 ・・・・・・・・・ 」

『 ・・・・・・・・・ 』

 

” ズボンの上から ” と言われ、良介のドキドキはさらに激しくなる 。

・・・またもや、しばし静寂・・・ 。

意を決したように、直樹が口を開く 。

 

『 ・・・ダメ、ですよね、やっぱり 』

「 ・・・・・・いや、そんなこと・・・ 」

 

『 ・・・・・・・・・ 』

「 ・・・・・・・・・ 」

 

無言のまま、シートの背もたれを倒す良介 。 仰向けになる 。

良介の左手は直樹の右手を握ったままだ 。

その手をゆっくり引き寄せ、自らの股間へと導き、あてがった 。

 

良介には、自分の心臓の音だけしか聞こえない気がした 。

 

直樹もシートを倒す 。

 

『 良介さん・・・ 』

「 ・・・うん・・・ 」

 

横たわった良介の顔 。 上を向いたまま、目を閉じている 。

直樹が一旦右手を放した 。

良介の横顔に見入りながら、左手で良介の股間に触る 。

そ~っと、おずおずと、ゆっくり、大切なものに触れるような直樹の仕草 。

 

「 ・・・ああ・・・ 」

良介の声 。

『 良介さん・・・ 』

「 ・・・うん・・・ 」

 

愛撫を続ける直樹 。

『 大きくなってきた・・・ 』 

「 ・・・うん・・・ 」

 

その形に沿って、やさしく撫で上げるように指を這わせる 。

 

目を閉じたままの良介 。

全身の血液と神経が股間に集中して行くようだ 。

 

「 ・・・ああ・・・、直樹・・・ 」

『 良介さん、すごい立派だ 。 おっきィ・・・ 』 

「 ・・・いや、 直樹、 ああ・・・ 」

 

今度は握りしめる直樹 。

「 ・・・あっ・・・、ナッ、ナオキ・・・ 」

『 良介さん、・・・良介さんのここ、僕のもの、なんですよね・・・ 』 

手に力を込める直樹 。

「 ・・・ああ・・・、うん 。 ・・・直樹のものだ 」

『 僕のもの、・・・僕のもの、・・・僕だけのもの 』

 

良介の息が荒くなる 。

「 ・・・ああ・・・、ハア、ハア、・・・ 」

 

手のひらに跳ね返ってくる感触を確かめるように、力を加減してみる直樹 。

ドキドキや血管や神経を通り越して、ただ快感に飲み込まれそうな良介 。

ドスン !! ・・・ ドスン !! ・・・ ドスン !! ・・・

背骨から腰の辺りに、まるで和太鼓の響きのような衝撃が走り始める 。

 

「 ・・・ああ・・・、直樹、・・・ねえ、ゴメン・・・俺、そろそろ、その、危なくなってきた・・・ 」

『 あ、はい 。 それじゃあ・・・ 』

 

直樹は力を緩め、手のひらをそっとあてがっていたが、やがて放した 。

   ・

   ・

   ・

しばらくじっとしていた 。

 

 

無言のまま、からだを起こした良介が直樹に微笑む 。

 

直樹は恥ずかしそうに微笑み返し、目を伏せる 。

 

 

直樹のからだを起こして抱き寄せる 。