第 四 章    コ リ ン ト 人 の 恋  -4-

 

 

ワア~、・・・俺、・・・ついに、ついに告った !!  

直樹のこと好きだって 。 ちゃんと、恋愛の対象として好きだって 。

宏先輩と照くんの時は無理だったけど、直樹には、今ようやく気持ちを伝えた・・・。

 

直樹も ” はい ” って言ってくれた 。

 

ああ、良かった 。 我ながら、頑張ったな・・・ 。

ここまで、・・・いや~、長かった~ 、やれやれだ 。

・・・フ~、・・・ほっと・・・した 。

 

 

「 良介さん、ねえ良介さん !!

 

気が付くと、直樹が不思議そうな顔で、良介をじーっと見ている 。

 

『 ん、何 ?』

「 えっ ? ・・・何って、・・・あの・・・ 」

 

『 あっ、そうかそうか 。 俺の話をちゃんと聞いてくれて、どうもありがとう 。 俺、楽になった 』

 

「 ・・・ありがとう、ですか ? ・・・どういたしまして、・・・って、・・・それじゃあ、良介さんの話、もう終わっちゃったんですね ?」

『 うん !!

「 今ので、・・・終わりなんですね ?」

『 うん・・・、えっ、俺、・・・なんか間違った ?』

「 いえ、間違ったってことはないと思いますけど・・・ 」

『 ・・・・・・ン?』

 

「 あのー、今の話って、・・・良介さんが僕に、告ってくれたんですよね ? 」

『 うん、そのつもりだけど・・・ 』

 

「 ・・・はあ、・・・・・・ 」

『 ・・・・・・・・・?』

 

直樹は正面を見据えて、何度かまばたきをした 。

何か考えているようだ 。

 

「 ・・・告ったあとって、その・・・、相手の気持ちを確かめるとか、改めて交際を申し込むとか、普通はそういうのがセットになってるような気がして・・・。 僕もよくわかりませんけど・・・ 」

『 うん、そうだろうね、きっと 』

「 はい 。 ・・・だから、まだ続くんだろうって、僕・・・、その・・・ 」

 

『 あ~、そうか、そうだよね・・・。 ゴメンゴメン、直樹の言ってること、勿論、俺もわかるよ 』

「 はい 」

『 ・・・俺、・・・直樹が、今日さ、久しぶりに俺に逢って、嬉しくって腰が抜けたって聞いたら、もう、俺にはもったいないくらい感激しちゃって、それでようやく、告るのに踏み切れたくらいだから 』

「 ・・・ああ、・・・はい 」

『 あと・・・、えーっと、これから先もずーっと楽しくやろうよってのは、ホラ、前に植物園で約束したしさ 。  ・・・だから・・・ね・・・ 』

 

「 ・・・はあ、・・・・・・ 」

『 ・・・・・・・・・ ? 』

 

直樹にしては珍しく反応が遅い 。

 

「 ・・・そうなんですね ・・・ 」

『 ・・・・・・・・・ ? 』

 

えっ、俺、なんか忘れてる ? …失敗、したのか・・・?

 

 

「 ・・・僕、ちょっと風に当たって来ます・・・ 」

 

そう言って、車を降りる直樹 。

ゆっくりと慎重な足取りで展望台の方へと歩き出した 。

 

 

・・・直樹、ひとりになりたいのかな・・・。

・・・この状況・・・その方がいいのか ?

ああ、駄目だ、らせん階段は危ない 。

 

良介も後に続き、階段の登り口で追い付く 。

いつでも直樹を支えられるように直樹にくっついて登る良介 。

 

 

展望台に登ると、眺めは一変した 。

眼下に岬や灯台や幾つかの島々、そして大海原が広がっている 。

直樹が言ったとおり、絶景だった 。

驚いたのは、その眺めが、良介お気に入りの ” オレンジ色の入江 ” のアングルそのものだったことだ 。

ああ、あの写真、ここで撮影したんだ 。

そうか、・・・ってことは、直樹の大好きな場所ともクロスしてたなんて、なんかいいな 。

 

 

「 良介さん・・・ 」

『 ン ?』

「 僕も、良介さんのこと、・・・好きです 」

『 ・・・うん、・・・ありがとう 』

 

「 良介さん、やさしいしジェントルマンだから、人として尊敬しますっていうのは勿論だけど、・・・男前で、カッコ良くて、すごくセクシーで・・・ 」

『 いや、・・・そんな・・・、照れちゃ 』

 

「 良介さん !!

良介の言葉は直樹にさえぎられた 。

 

『 ン !?

「 僕、良介さんのパーフェクトなボディを・・・、僕、その、誰にも触らせたくないんです、絶対に・・・。 ほんのちょっとだけでも嫌なんです、絶対 !!

『 あ~、・・・・・・うん 』

 

「 ・・・だから、・・・だから、・・・良介さん、これからは僕だけのものになってください !!

 

!!   !!   !!  わかった !!   約束する 』

 

「 本当に ?」

『 うん、噓じゃない 。 今から、俺、直樹だけのものだ 。 心も、からだも、ひっくるめて、直樹だけのものになるから 。  ・・・あ、待てよ 。 ・・・ちょっとだけ違うかな 』

「 えっ ?  違うって ? 」

『 今からって言ったけど、・・・俺、公園で直樹と初めて話した時から、ず~っとさ、自分ではそのつもりだった 。 勝手にね 。 俺の全部が直樹のものだって 。 そうやって・・・俺、ず~っと、フリーじゃなかった 。  直樹に、がんじがらめにされちゃってる 』

 

「 僕にがんじがらめ・・・じゃあ、良介さんは、僕だけのものってことですね !? 」

 

『 うん 。 俺は直樹だけのもので、・・・直樹にぞっこんだ 』

 

「 わ~、ヤッター !!  良介さんは僕のモン !!  わ~ 」

 

『 ハハハ・・・・・・ 』

「 アハハ・・・ 」

『 ハハ・・・・・・・・・ 』

「 アハ・・・・・・この流れって、・・・ハグのパターン、・・・ですよね 」

『 だな !! 』

 

 

抱き合う良介と直樹 。

 

植物園での最初のハグは、泣き出した直樹を良介が咄嗟に抱き寄せた 。

2度目は良介のマンションで、直樹のおしゃべりを黙らせようと、やはり良介が直樹を抱き締めた 。

 

今日のハグは、気持ちがひとつになれた充足感に満たされている 。

 

ちょっとチグハグだったが、いかにも良介らしい、正直で欲のない、まっすぐな告白だった 。

直樹がフォローして、最後は直樹のリードでようやく着地出来た格好だ 。

協力し合って成し遂げた、ちょっと珍しい告白 。

それがうまくいって、より一層、一体感に包まれるふたり 。

 

 

良介を直樹が受け入れ、直樹を良介が受け入れ、新たな関係がスタートする 。

 

大きくて深い喜び、恋の・・・、愛の・・・、人生の・・・、素晴らしい喜びを手に入れたふたり 。

 

 

展望台に吹きすさぶ真冬の冷たい風も、良介と直樹には心地良い 。