第 三 章 君 は 五 月 の 風 -13-
来た !!
憧れの人がここを通るようになって驚いた直樹 。
ワクワクする 。 チャンスだ !! このチャンスをなんとかうまく活かしたい 。
なんかいい方法、ないものか・・・。
いつもこの時刻だから、多分、仕事帰りだろう 。 ここを通って公園へ入って行く 。
前は見かけなかったから、最近、引っ越して来たのかなあ 。 でも、スーパーでは以前から見かけていたし・・・。 帰宅のコースを変えたとか・・・ 。
で、昨日はスーパーでも見かけたけど、僕が買い物するのって、まだ1時間以上経ってからなんだけどなあ・・・。 なんだかよくわからない 。
そおーっと、あとを付けて行きたいけど、それは無理だ 。 夕方はスタンド混み合うし・・・。
あの人との接点って、これまではスーパーだけで、チャンスは一度もなかった 。 スーパーじゃ、おそらくこれからもチャンスはないと思っていいだろう 。 で、今は毎日ここを通るけど、その時刻、僕は忙しい 。 しかも、ここを通るって言っても向かい側の歩道だしな・・・ 。
・・・あ~あ、せっかく接点が増えたってのに、悔しいなあ 。
・・・あとは、・・・公園 ?
ここを通って、公園に入って行く 。 公園って、どうなんだろう・・・。
公園ねえ・・・。 まっ、なにかヒントが見つかるかもしれないな 。
とりあえず明日の昼休みに行ってみよう 。
翌日の昼休み、公園へ行ってみた 。
犬を散歩させている人 。 ベンチでお昼を食べてるOLさんたち 。 遊具があって、芝生に樹木に、砂場・花壇 ・トイレ・噴水・駐輪場、、、。
これと言って特徴のない、どこにでもあるような公園だ 。
強いて言えば、樹木や噴水に寄って来る鳥がお目当てなのか、バードウオッチングらしき人達が居た 。 カメラを据えて待機したり、話をしたりしている 。
ひょっとしたら、あの人も鳥が好きなのかなあ・・・。 それで、この公園を通るのかも 。
やさしい人だから、なんとなくそんな感じもするけど・・・。
バードウオッチングか・・・。 もしそうだとしても、僕、鳥にはそれほど興味ないしな・・・。
まあ、なんかのヒントやきっかけを探すにしても、こうやってひとりでブラブラキョロキョロってのは、人目もあるし、やっぱ、マズイな 。 ・・・そうだなあ・・・。 花壇でも撮って、母さんに見せてあげようかな 。 母さんも姉さんも花好きだから、きっと喜ぶだろう 。 初めて見る花もあるし、ウチの花壇に植えたいって言うかも 。 そんなことをしているうちに、あの人に近づけるかもしれないし・・・。
昼食のあと、公園でビデオをセットする直樹 。 今日が二日目 。 土曜日だ 。
あの人を意識するようになってから4か月くらいかな、好きになってからは3か月くらいだろう 。
・・・僕の初恋、少しは進んでいるのか ?
公園を通るって言っても、それは平日の夕方のことだ 。 今日は土曜日で、今は昼休み・・・。
まあ、可能性は低いだろうけど、仕方ない 。 他にいい方法も思いつかないし、何もしないよりはずっといいさ 。
こうしていると、・・・なんか、獲物を狙って網を張ってるって感じで、ちょっとドキドキする 。
へへへ、これって、漁師 ? 猟師 ? ラブハンター ?
よっしゃー! 大物を生け捕るぞ !!
可憐に咲いているガウラの列に焦点を合わせていると、いきなり鳥が飛び立って驚いた直樹 。
顔を上げ、鳥を見上げた直樹の耳に、男性の声がした 。
「 ごめんなさい。 鳥、驚かせちゃったね。 申し訳ない 」
声の方に振り向く直樹 。 なんと、あこがれの人がそこに居た 。
エッ !! 瞬間、驚きながらも、素早く彼に焦点を合わせる 。 抜かりはない 。
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やったー! ついに、ついに、あの人と喋った!
すごいぞ 。 やっと、やっと、・・・。
市役所の、サカキリョウスケさん 。
第一声が、 ” ごめんなさい ” って、・・・とってもフランクな人だ 。
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それから、僕達は急接近した 。
良介さんが新車で初めて給油に来た時は、飛び上がるほど嬉しかったなあ 。
アハハ、でもその次の回に、飾ってある写真を見て、奥さんとお嬢さんが居るって思って・・・急降下 。
洗車を頼まれた時は気合を入れて仕上げたっけ 。 僕の気持ちが伝わりますようにって・・・。
そしてコンサート 。
初デートだからブレザーを新調して、記念にCDもいっぱい買った 。
あの日、ようやく、良介さんが独身だって知ったんだ 。
思いっきりハイになっちゃった・・・。
それから・・・仕事帰りにコーヒーを飲むようになって・・・。
宏先輩の個展・・・植物園で僕が泣いちゃって、初めてのハグ 。
チョコケーキを持って行った良介さんのマンションで、2度目のハグ 。
ワオ !! 良介さんたら、 ” タってきちゃった ” だって !!
そのすぐあと、今度は良介さんが泣いた・・・。
良介さんの実家にお邪魔して、お父さんのお墓参りして・・・。
マンションへも、いつでも好きな時においで、と言ってくれた良介さん・・・。
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良介さん・・・。 カッコ良くてパーフェクトなマッチョで、いつだってやさしい 。
善良で、ジェントルマンで、・・・人格者だ 。
信じられないくらいウブなところもあって、抱き締めたくなっちゃう 。
最初はひたすら、良介さんを欲しいって思ってた・・・。
でも今は・・・、僕、良介さんを、・・・幸せにしたい 。
僕のこの手で、幸せにしてあげたい !!
それが、僕の望みだし、僕の幸せでもある・・・。
これって、どういうことだろう・・・。
多分・・・、最初は、” 好き ” だったのが、今は・・・ ” 愛してる ” ってことかな 。
僕・・・、
良介さんを・・・、
・・・愛してる !!