第 一 章 ま だ 見 ぬ 恋 人 よ -9-
・・・今や、恋する男、榊良介。
ナオキ、ナオキ、ナオキ、・・・ハラミネナオキ・・・。
スタンドにナオキの姿はなかった日曜日。
さわやかな笑顔をくれた月曜日。
そして今日は火曜日。 接客中のナオキの後ろ姿を見ながら歩いた。
良介を虜にしたあの笑顔、今日はお預けだ。 明日だってどうなるかわからない。
それにしても、欲ってキリがないもんだな。 ひとつ手に入れたら、すぐに次が欲しくなる。
一週間前は、ナオキを見るだけですごく嬉しかったのに、今はあの笑顔が見られないと、なんだか腹立たしい。 初めて言葉を交わした時は、飛び上がるほど興奮したのに、今はもう、あの短い会話を思い出すだけでは物足りない。 もっといろんなことを話したい。 ナオキのことを知りたいし、ナオキにも俺のことを知ってもらいたい。
人を好きになるって、こういうものか。 これが自然なんだろうな、きっと。
だとしたら、これまでの俺は自然じゃなかったってことか? どうだったかな・・・。
・・・宏さんの時は・・・。
高校で部活の先輩だったから、毎日のように会えたし、今みたいな不満はなかったな。
初めて同性に魅かれて、そりゃあ戸惑ったけど、ラッキーって思ったりもした。 ワイワイガヤガヤ、部活をカクレミノにして、いつもそばに居られたし。
俺は純情で、モーション掛けようなんてことは考えもしなかった。 ・・・でもそれはきっと、宏さんが俺を相手にしてくれるなんてことは絶対にあり得ないって、無意識にわかってたからに違いない。 それで最初から自分なりのゴールを決めてたんだろうな。
・・・照くんは、10年前か・・・。
宏さんの時よりは、・・・俺も少しは前へ進もうとしてたな。 でも結局は駄目だった。 照くんにも迷惑かけちゃって、最後の俺は・・・修羅場だったな。 それでも、初めはワクワクして楽しかったし、今では大切な思い出だ。 ハハハ、ろくに見もしないDVDを、照くんのバイト先へ毎日のように借りに行ってた。 カウンター越しに照くんと話を・・・! ! ! ! !
アッ !! アーッ !! そうか、わかった、車だ !!
そうだ、車、 車 !! ウ~~、なぜ早く気がつかなかったんだろう。
えーっと、・・・ タケ、 タケ、 タケくん、 タケさん、 タケ様・・・、
「 もしもし、タケ ? 」