福原愛さんとエッジボール | 榊邦彦 OFFICIAL BLOG new

榊邦彦 OFFICIAL BLOG new

けれど一方で、言葉や愛がまったく立ち向かうことのできない不安や困難も、
また、存在しないのではないか……僕は、今そう思っている。
『100万分の1の恋人』榊邦彦(新潮社)

榊邦彦の公式ブログです。
ご連絡はこちらまで
evergreen@sakaki-kunihiko.jp

福原愛さんが、リオ五輪で大活躍しつつ、しかし、大変惜しいところで惜敗している。

シングルスの三位決定戦では、キム・ソンイ(北朝鮮)に敗れた。
キム・ソンイは、3回戦で石川佳純を破った選手だ。
キム・ソンイの戦略について、福原愛は、石川佳純に尋ねることはしなかったという。
「チームメイトの傷をえぐるようで、尋ねることなどできなかった」
との言だ。

団体の準決勝でも、大接戦の上、ドイツに敗れた。
ダブルスを接戦を落とし、シングルスの五番でも大接戦を落とした、福原愛は、涙をこらえながら「すべて私の責任です」と語った。

シングルスの三位決定戦敗戦も、団体準決勝の敗戦も、最後はエッジボールという不運だった。
ネットインなどで点を取った際に、いつも、申し訳なさそうに手を挙げていた福原愛の様子を思うと、なんとも言葉に窮する結末だ。

今日、O社の編者のNさんと、福原愛について話した。

僕が、
「福原愛には。ぜひ、団体戦の銅メダルを取ってほしい」
と語ったところ、Nさんは、
「たぶん、銅メダルは取れない。けれど、福原愛は、メダル以上の多くのものを手に入れている。キム・ソンイ戦の前に、石川に戦略を尋ねなかったことも、団体準決勝敗戦の後のコメントも、すべて福原愛の人間力。それが人を惹きつける。彼女は、勝負には負けても、人生での豊かなものは、すでに手に入れている」
と語った。

 銅メダルを取れないという、Nさんの言葉には、反論したけれど、後半のNさんの言葉には、納得させられた。
 福原愛に惹かれる、その魅力は、福原愛そのものからにじみ出るもので、それは、彼女がメダリストであるかどうかとは関係ないものだ。彼女はその豊かなものを、すでに手に入れているのは間違いない。

 ……

 Nさんの言葉を聞きながら、僕達、オリンピックメダリストになる可能性のない者にとって、人生において心掛ける道を、何か感じさせられた思いがした。

 試合に勝つかどうかは、我々が「価値」として、最終的に目指すところではないだろう。「価値」として、目指したところで、為すことができるかどうか、それは努力とは正比例しない。
 しかし、その周辺、人生の時間の中での、さまざまな心遣い・心の持ちよう。
 それらは、もしかしたら、僕達でも目指すことが出来るものだ。

 それは、メダル以上の財産を、一皮ずつ積み重ね、作り上げていく。
 人柄や信頼は、もしかしたら、メダルよりも手に入れるのが難しいかもしれないが、一方で、誰でも目指すことのできる宝物でもある。

 ……

 さて、明日の女子卓球団体、三位決定戦。
 心が痛くて、見ることが出来ないかもしれないと思っていた。
 けれど、今は、余裕を持って(でも、多分無理)、応援しようと思う。
 勝とうが負けようが、メダル以上のものを、福原愛やほかの選手たちも手にしていると思って。

 それでも、正直、銅メダルは取ってほしいなあ。
 個人的には、福原愛で決めてほしい。
 最後はエッジボール。
 
 自身の三位決定戦でも、団体の準決勝でも、唇を噛んだ「エッジボール」で勝利して、しかし、大げさに喜ばない福原愛を見たい。(でも、やっぱり喜んじゃうよなあ。TVの前でも飛び跳ねそうだ。)

 がんばれ、福原愛。

 応援します。(Nさんの予言は外れます!)