3D映画について 「ALWAYS 三丁目の夕日 '64」レビュー | 榊邦彦 OFFICIAL BLOG new

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けれど一方で、言葉や愛がまったく立ち向かうことのできない不安や困難も、
また、存在しないのではないか……僕は、今そう思っている。
『100万分の1の恋人』榊邦彦(新潮社)

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最近、3D映画が増えている。

映画は好きで、3D映画も「ジョーズ3」(1983)あたりから、たくさん見てきたが、あまり好きにはなれなかった。
確かに「おおっ」というびっくり感はあるけれど、目は疲れるし、何よりも、「びっくり箱」的な仕掛けは、映画本来の「作品的感動」を阻害してしまうと思っていた。

ところが、この間、観た「ALWAYS 三丁目の夕日 '64」で、その考えはぶっとんでしまった。

確かに、最初は「目が疲れるなあ、うっとうしいなあ」と思って観ていた。「三丁目の夕日」シリーズは、大好きで、劇場ではもちろん、そのあとも、何度もテレビやDVDで観てきた作品だ。「せっかくの新作なのに、失敗した。2D版のほうで観ればよかった」などと、後悔さえしていた。

ところが、10分も経つうちに、そんな違和感もなくなり、そのあとは、作品世界にどっぷりとつかりきった。
違和感がなくなったどころか、涙腺ゆるみっぱなし。
今まで観た映画の中で、「おくりびと」に並んで、一番、泣いた映画かもしれない。
ラスト近くとはいわず、映画後半になれば、もういたるところに、「泣かせる場面」がちりばめられている。

ここまでよくできていれば、「びっくり箱」も邪魔にならない。むしろ、涙の合間に、「おおっ」というサービスがある感じで、人情型娯楽大作としての完成度が非常に高かった。

涙と笑いと驚きという、なんとも贅沢な映画体験で、今までの「3D」に対する感覚を見事に裏切ってくれた作品だった。

(一つだけ、やはり難を言えば、3Dメガネが、涙で曇る……)