不意に祖母のことを思い出した。
十七年前に九十三で亡くなった。
僕は、事情あって、父にも母にも育てられなかったから、祖父が父代わり、祖母と伯母が母親代わりだった。
……
妻さんと、お弁当の話になった。
二男が高三なので、妻さんのお弁当作りもそろそろ卒業だ。
……
僕のお弁当は、中学・高校六年間、ほぼ毎日、祖母が作ってくれていた。
あらためて、妻さんと、祖母の年齢を逆算してみる。
今更、思い知る。
祖母が僕のお弁当を作ってくれていた六年間は、七十代後半から八十代前半にかけての時期だった。
妻さんが、「すごいな」と一言もらした。
……
十代のころは、そんなこと一回も思わなかった。
自分が四十代になって、改めて有難さを痛感する。
七十代・八十代で、毎日、朝早く、お弁当を作ってくれていた。
ひ孫が見せられて良かったと思う。
お祖母ちゃん孝行になった。
書店に並んだ僕の小説も読んでもらえればよかったけれど、間に合わなかった。