夜中までの撮影の後、一人部屋でビールを飲みつつ撮影で殺気だった躰と精神をゆるめる。意味なくテレビを眺めているとテレビの箱の中から歌声が聴こえてくる。音楽にまつわる番組が3つもあった。ギター練習中の僕としては興味深いものだった。早くギターを自由に弾きたい。メロディに乗ってどんな所にも行ってみたい。時空を越えて、人間さえも忘れて漂いたい。どんな所にも届く存在になりたい。電話が鳴った。妻からだった。僕はどうやら東京の妻の所にたどり着いたみたいだ。目を閉じる。瞼の裏に映るのは赤いギターだ。明日優しく抱いて掻き鳴らそう。