田中実さんの自殺報道を見て、心配になっての電話

テレビに出ないと心配になるらしくてね

俺は30才になった時、大手プロダクションを辞めたんですよ

「此処にいたら死んでしまうんじゃないか」と思ってね

仕事は順調だったけれど、精神的な負担が大きかった

何の為に役者しているのか解らなくなったんですよ

そんな風に思ったのは『スクール・ウォーズ2』の頃から

やはり、ちゃんと映画の畑に行きたかった

「売れたら大丈夫、売れたらやりたい方向に変えられる」

そう思ってた

しかし、NHKの朝のドラマが決まって、全国区になったあと


逆にどんどん、やりたい方向から遠ざかって行った

『好青年』

来る役は全部それ

それ自体は悪くなかったが、‘たまごっち’のブームと同じで、そればかりだと、それ自体が要らなくなってしまう

そう、『好青年役』でしか要らないとなれば、俺自体が要らなくなってしまう

もっともっと幅のある役者になりたくて頑張って来たのに、役者としては、‘実力’では無く‘旬’なだけで、先行きが見えてた


確かに収入は上がったけど、思った事も出来ず、役者としての評価も上がらず、このまま終わって行くのかと思うと、えもいわれぬ恐怖感に襲われた

「まだ確固たる物が何も出せて無いのに終わる」

でも、事務所を信じるしかない

そんな心の戦いが何年も続いたある日、人の顔がまともに見れなくなり、普通に話も出来なくなった

「このままじゃ死んでしまう」

そう思って事務所を辞めたんです

次の事務所も決めずにね

根回しもしなかった。


「このまま終わるのなら才能がなかったと思って諦めよう」

しかし、事務所を辞めた瞬間

心の闇が無くなって、本当に、晴れ晴れとスッキリした

それからの苦労は口にしたくも無いが、あえて言うなら


世の中嘘つきと詐欺士ばかり

そりゃ良い人もいたけど、少なかった

何度も煮え湯を飲まされたが、今、俺は自分の意思で立ってる

大勢の人に喜んで貰う為に芝居を作ってる

あのまま事務所にいたら、多分死んでた

今みたいな俺は存在しなかった


田中実さんの死は本当に痛ましい

身につまされる

可哀相だ

ナースステーションてドラマで実さんと、団優太くんが一緒だったのだが、団くんも自殺していた

苦しかったんだと思う

あの時代で売れてた役者は、もうほとんど見掛けない

本当に何なんだろう

ちょっと売れたら、皆がこぞって買いに来て、風向きが変わったら、もう要らない

飽きさせない事と、売れた人間の心を考えるのは所属事務所だと思う

しかし、ちょっと売れたら「今だ!」とばかりに出がらしになるまで、売って、売れなくなったら「世間に飽きられた自分のせいだろ」なんて、そりゃ頭もおかしくなる

事務所を変わっても、飽きられた商品は買われない

頑張る場所もない

役者が意識改革しないと、殺されちまう

苦しい時は登ってる時と思って、『一歩一歩』歩いて行こう

きっと新たな道も、開け始める

俺はそう思うんです

田中実さん・団優太くんの辛さを考えると自分にもダブって苦しくなります

彼らの死を心から悼みます