短編シリーズ人間のKUZU 「贅沢のきわみ」その① | 占星術小説家@酒井日香の占い死ね死ねブログ

短編小説シリーズ「人間のKUZU」


「贅沢のきわみ」その①






(※注)


元は育ちの悪いカネ持ち成金の妻たちが、

日々つどい、自らのセンス向上を図る

秘密サークル「ホワイトローズクラブ」。



今日もエレガント指向のマダムたちが、

それぞれ自慢の食材を持ち寄って

ホームパーティーの準備をしていた。





A子 「ずいぶん立派なタラバ蟹ですね。

    しかもこんなにたくさん」



B子 「そうなの。宅の主人が、ロシアの

    取引先から送ってもらったものなのよ。

    本物の味を覚えていただく良い

    チャンスかと思ったので、思い切って

    松前さんをお誘いしてみたの。

    気に入っていただけてよかった」



C子 「そういえば、松前さんのご主人は、

    ちくわの穴あけ職人から身を起こした

    成り上がり社長なんですってね」



B子 「あらぁ、そうなの? そういった

    お仕事の奥様は珍しいわ。

    松前さんは庶民ってことね。庶民感覚で、

    私たちのサークルについて来られるかしら」



A子 「はぁ、まぁ……」



C子 「従業員は何人くらい

    いらっしゃる会社なの?」



A子 「じゅ、従業員なんてそんな……。

    主人と、お義父さんとお義母さんと、

    義姉だけでやってる会社ですわ」



B子 「いわゆる家族経営ってヤツね。

    まさか、あなたまで駆り出される

    ことはない?」



A子 「あ……。そうですね。おでん

    シーズンにはちくわの需要が

    多いですから、私もたまに

    手伝ったりすることがあります」


C子 「うっそー! ご主人、

    あなたを働かせるの?!」



A子 「ええ、まぁ……。

    生産が間に合わないときは」


C子 「ダメよそれじゃあ。いいこと

    松前さん。女はねぇ、男を癒すのが

    仕事よ」



(その②に続く)