NET Marketing Forum 2007の専門トラック、
特別講演「オロナミンCとファイブミニのマス/バイラル・クロスメディア戦略」のレビューです。


大塚製薬 

製品部オロナミンC・ファイブミニ プロダクト マーケティング マネージャー
井上 将司 氏


nikkei BPnetのレビューはこちら↓
NET Marketing Forum:ファイバー美人大学の警備員とアクダマーキンがmixiで戦う



この講演では、
大塚製薬オロナミンC・ファイブミニの担当者井上氏が、

各商品のプロモーション実績や仕掛けの考え方について、

企業側担当者の生の声としてプレゼンしていただけることになりました。


時間が足りないという前置きから、

基本はファイブミニを中心に事例を話し、オロナミンCは余裕があれば、

ということで進めていただきました。




軽く、メディアミックスなどの話を触れられた後、

早々と、ファイブミニの事例をお話いただきました。




ファイブミニの昨年2006年度のmixi中心の展開は、

既にご存知の方も多いと思いますが、


「ファイバー美人大学@mixi_campus」

と、


「体内怪人ファンコミュ!」でした。



今もmixiでは継続して運用されているようです。



製品コンセプトが「腸をキレイにするデトックス効果」という、

ファイブミニの飲用効果を説明したい目的があったため、

このような展開になったようです。


その展開については、こちらの記事と、

NET Marketing Forum:ファイバー美人大学の警備員とアクダマーキンがmixiで戦う

こちらのブログの記事が詳しいです。

通勤電車:「4月のライブ」

おそらくですが、今回のNet Marketing Forumの井上氏の講演内容は、

月刊「アイ・エム・プレス」の時に使用されたものをベースにされているようです。

話がこちらの記事内容とほとんど同じでした。


というわけで、

講演内容は、このアイ・エム・プレスさんのレポートでほとんど伝えられているので、

僕のほうからは、僕が感じたことと2007年度の展開を中心に紹介しますね。




通勤電車:「4月のライブ」 から引用すると、

------〈引用ここから〉----------------------------------------------

結果、多くのアクセスを集めると同時に、ネット上で話題になった後に雑誌などを絡ませることでさらなるアクセス増が図れることが判明したものの、売上高という観点からは期待したほどの効果が得られなかった。(ただし、ファイブミニの中心顧客層が50代であるのに対し、若年層の購買を押し上げる効果はあったらしい)

これを受けて、息が長く、ターゲットも幅広いブランド(ファイブミニ)では、セグメントしたターゲットのみに訴求したのでは無理があること、世代によってリーチメディアが異なることを実感したという。

------〈引用ここまで〉----------------------------------------------

このように、大塚製薬さんでは、下記のような広告賞は獲っており、

広告としての評価が高かったのは喜ばしいのですが、

実際に短期的な売上につながっておらず複雑な気分だったようです。


Future Marketing Awards受賞 六本木新聞:西麻布に「ナイキコスプレ」が登場-広告賞表彰式で

第5回 東京インタラクティブ・アド・アワード入賞


つまり、ネットのある一部のコミュニティで盛り上がったとしても、

ファイブミニのようなターゲットが幅広いブランドでは、

全体の売上増加につながるようなインパクトは得られないという結論ですね。


この結果はある程度予想はできていたと思うのですが、

実際に数字となって評価されると、なんともショックでした。


ネット側でプロモーションを企画している人間としては、

特にショックが大きい事実でした。


これは、ある意味、オンラインのクチコミで盛り上がっても、

売れる結果につながらないという現実を突きつけられたようなものです。


これでわかるように、

ネット上のコミュニティやそこから拡がるクチコミは、

商品ブランドによってはターゲットが狭すぎて成功しない恐れがあり、

ブランドにあわせた使い分けが必要であるということです。


なんでもかんでも、ネットのクチコミが良いってわけではないというのが、

結論といえば結論でしょうか。






そして、2007年度のファイブミニの展開はというと・・・

「デトックス効果」がわかりくかったのでは、という反省から、

シンプルにファイブミニの特性である、

「レタス1.8個分の食物繊維とレモン15個分のビタミンC」を

わかりやすく訴求することを目的にされたようです。


今度は、クチコミだけではなく、

マス媒体を中心としたネットでのバイラルを狙っているようです。




2007年度ファイブミニマーケティング展開


【4/1 ティーザーサイトオープン】
・ティーザーとしての2つのWebサイトを開設
レタモン:http://www.shin-yasai.jp/
スーパーレタス&グレートレモン:http://www.shin-shohin.jp/


【4/11 CM発表会】
イザ:上野樹里の結婚は遠い?健康飲料「ファイブミニ」CM発表会
ORICON STYLE:上野樹里、新CM会見でマズい顔…


【4/14 TVCMオンエア】
・CMをオンエアすると同時に本番のWebサイトを開設
・裏サイトを開設
・裏サイトから発生したWeb専用のバイラルCMを展開
・バイラルCMをTVなどでオンエア



○ブランドサイト:ファイブミニ


○裏サイト:レタモン-レタモンファーム (TVCM新野菜篇と連動)



○裏サイト:スーパーレタス&グレートレモン (TVCM新商品篇と連動)


○TVCM:4/14~新野菜篇 6/9~新商品篇



Webサイトの展開は、かなりふざけてますね。


裏サイトに行ってもらえればわかるのですが、

大げさに嘘コンテンツを作っているのが面白いです。


商品ブランドサイトで、ここまで思いっきり嘘サイトを作った例は

初めてではないでしょうか。


ファイブミニを軸に、

レタモン、スーパーレタス&グレートレモンと比較させ、

「レタス1.8個分の食物繊維とレモン15個分のビタミンC」が入ってる

ファイブミニの優位さをわかりやすく、大げさに訴求する展開です。




そして、このクリエイティブでわかるように、

「早い話が、これ一本。」
という最終的なオチにつなげています。


大げさにレタモンやスーパーレタス&グレートレモンなんかいらなくて、

早い話がファイブミニ一本でいいという、コミュニケーションですね。


Webサイトの構造としても、面白く、

早い話がファイブミニということで詳細を見るリンクか、

早くない話ということでスーパーレタス&グレートレモンの裏サイトへのリンク、

という形で導線を作っています。


一度サイトを回遊してみると、

そのふざけた感覚がつかめると思います。


さらに、今後は、

この3つの軸で、セカンドライフに進出するそうです。

井上氏は三国志みたいなものって言ってました。

セカンドライフで、ファイブミニとレタモンとスーパレタスたちが、

闘うのでしょうか?


さてさて・・どんな展開になるのか、楽しみです。




そして、現在のところの結果ですが、

TVCMでの展開で勢いがついたのか、

売上も2割増になったということでした。


マーケティングという点では成功になりそうですね。


広告予算との兼ね合いで、

それがどれだけの成功かどうかは計りかねますが、

少なくとも井上氏は手ごたえを感じておられるようでした。





さらに、講演では、オロナミンCについても、

駆け足でいくつかご紹介されました。

オロナミンCのWebサイト がリニューアルされ、

キモチスイッチプロジェクトが大々的に展開されています。


オロナミンC presents キモチスイッチ いつもキモチにスイッチを!

Yahoo! JAPAN - オロナミンC Presents キモチスイッチプロジェクト

Myspace 中村俊輔バーチャルサッカースクール

CMバトル、今度は47都道府県対抗!|キモチスイッチCMバトル2007


とにかく、デカいプロジェクトです。

いろんなところで、ネットを絡ませて、

面白いことをやっています。


かなり楽しそうな仕事だと思いました。


その中で井上氏は、ヤフーさんがいないことに断りをいれつつ、

「ヤフーも単純なバナー広告はもう必要ないよ」

みたいな発言をされ、今回のようなメディアタイアップ型での展開を

重視する姿勢を伝えておられました。


さすが・・・、よく知ってるなあ、と思いました。





そして最後に、井上氏がまとめらていた言葉が印象に残りました。


「現在はWebを巻き込んだメディアの再編成の時代。

その中に身をおいてマーケティング活動ができるのは幸せ。

知識はなくても、スタッフを信じて、いろいろチャレンジすることが重要。」


といったニュアンスのお話で締められました。


既に、進んでいる企業担当者は、こういった考えを持ち、

自らノウハウを貯めようとしているんだな、と、

痛感する思いで聞いていました。


この講演では、

企業担当者のレベルがあがってきており、

企業独自でノウハウをもっていきつつある実態に良い衝撃を受け、

身を引き締められる思いにさせていただきました。