また再び「1ページの絵本」の季節がやって来たのですね(⋈・◡・)

 美術に興味が無かった頃,僕は「絵画鑑賞」というのは一体何を観るのだろうということを常に疑問に思っていました。作品を観るのは当然のことですが,何かの折に試しに絵画の前に立ってみても漠然と画面を観てはただただ困惑するばかりだったのを覚えています。
 そんな僕が自分なりに絵画鑑賞の面白さに気付いたのは,美術に興味を持って暫くしてからのことでした。最初は何となく視覚的な面白さを感じているだけだったのですが,徐々に「これは一体どんな場面を描いた絵画なのだろうか」ということに興味が移って参りました。たとえば女性が1人椅子に座っている絵画でも「これは何の場面でこの人は今何を思っているのだろうか」ということを想像すると同時に「自分はこの絵画のどの部分から,そのような想像を抱いたのだろうか」ということを考えるようになってからは,絵画を観ることがどんどん面白く感じられるようになったものです。無論,絵画の中には歴史画や神話画等の「それがどんな場面なのか」を事前に把握出来る作品もありますが,そうした作品についてもやはり「この場面においてこの人物はどんな思いを抱いているのか」「作者はそれをこの絵画のどの部分でどのように描写しているか」といったことを考えるようになったので,ほぼ同じ鑑賞をしているのではないかと自分では思っています。

 今年も茨城県古河市の「古河文学館」が例年行っているコンクールの季節がやって参りました。こちらは事前に指定された絵画を観て300字以内でオリジナルの詩か物語を創作するというものです。現在「小中学生の部」と「一般の部」で各々作品を募集中で,締切は2024(令和6)年の9月10日(当日消印有効)です。通常,本の挿絵というのは事前に存在する物語に合わせて描かれるものですが,こちらのコンクールではそれが逆になっているというのが興味深いところですね。
 実はこちらの「1ページの絵本」のコンクールについて,僕は自らが行っている絵画鑑賞法を洗練させその技量を問うものではないかと感じています。こちらのコンクールでは提示された絵画を根拠にして物語を作り出すことが求められていますが,それは僕が絵画を前にして行っている「何の場面か・登場人物は何を考えているか」といった考察を更に深く行うものであることに他なりません。

 僕は指定された絵画を観ても物語を思い浮かべることは出来ず,現段階で自ら応募することは到底叶いません。しかしこちらのコンクールについて知って僕は「自分の行っている絵画鑑賞は,決して独善的な見当外れなどではない」と非常に心強く感じると同時に,いずれは僕自身もまたこうしたコンクールに応募出来るほどの鑑賞能力を身に付けたいものだと願うようになりました。いずれその日が来ることを願いながら,今の僕は拙い絵画鑑賞を続けるばかりです。
 そしてそれと同時に,皆様にはこちらの「1ページの絵本」コンクールへの参加を強くお勧めしたいとも思います。素晴らしい鑑賞も,その人の内心に留めておくだけではいずれ消え去ってしまいます。しかしこちらのコンクールへの応募を通じて文章化すれば,その鑑賞の成果を万人のもの・永遠のものにすることが叶います。そのようにして優れた鑑賞成果を人間社会の共有財産に出来たならば,それは何にも増して素晴らしいことなのではないでしょうか。



作品見て詩や物語を創作 「1ページの絵本」を募集 古河文学館