東京でも展覧会を開いて頂けたら,嬉しいなぁ(。・_・。)。oO

 絵画の一種に水墨画というものがありますね。名前のとおり,通常は書道に使う墨で描かれた絵画です。僕は以前から何度も申しているとおり美術には何の興味も無い子供でしたが,それでも小学生時代に水墨画を目にする機会はあり「渋い(๑˃̵ᴗ˂̵)」と好ましく感じたことを覚えております。何故そのように感じたのか。もう記憶も曖昧ですが,恐らくは白と黒だけのシンプルな彩色が目に心地良かったのではないかと思います。
 しかしながら近年になって僕が美術を好きになってからも,水墨画との再会の機会はなかなかありませんでした。せいぜいが「グリザイユ」という白黒で描く西洋画の作品に触れた時に「これは西洋の水墨画かな」などと感じた程度です。今回この文章を書くにあたって念のために僕自身の鑑賞記録を確認してみたのですが,僅かに前田彩華氏という方の作品を鑑賞したことがある程度です。恐らく,現代では水墨画を描く画家があまり存在しないのでしょう。その理由については全くの憶測になりますが,日本において明治時代に書道を美術の範疇から外してしまったことの悪影響が今に続いているのではないかと僕は考えます。水墨画においては「賛」といって,画中の余白部分に詩文を記すことが稀ではありません。つまり水墨画は絵画であっても書道と密接な関係を持っているジャンルであり,美術教育の中で書道が教授されない日本では水墨画を描こうにもその技術をマスターしている人もなかなか存在しないのではないか。余談ながら中国では書道を美術の重要な一ジャンルとして捉えるのが今も一般的で,美術家は書道をも習得していることが多いのだそうです。実際に中国から日本の美術大学に留学している学生さんが,絵画とともに自らの見事な書道作品を展示しているのを観たことがあります。

 そのようなわけで水墨画といえば古い名作を鑑賞するだけで,少なくとも日本人による新しい作品を観ることは殆ど不可能なのだ・・・とばかり思っていたのですが,それは僕の大きな勘違いだったようです。鹿児島県について勉強しようとネット検索していたところ,偶然にもこのようなニュースに出会いました。水墨画家の篠原貴之氏が,鹿児島県で初の個展を開催中ということです。こちらの記事に添付された映像を観るだけでも「山」や「桜島朝陽」・イタリア風のゴンドラが水に浮かぶ作品など,その見事さに思わず「うわー!(。・о・。)!」と声を上げてしまいました。特に感心させられてしまったのが向き合う2体の木彫りの仏像を描いた作品で,目の前に実際に仏像があって木の香りすら感じさせるようなリアルさにはただただ圧倒されてしまう思いです。
 これらの作者である篠原貴之氏とは,一体どのような方なのでしょうか。こちらの記事だけでは判らないので,早速ネットで検索してみました。同氏は1961(昭和36)年に京都で生まれ京都市立芸術大学と同大学院で学んだ後にかつては京都芸術短期大学(現在の京都芸術大学)で教鞭も執っていらした方なのですね。但し同氏が専攻していたのは彫刻であって,水墨画ではありません。大学の先生になってから個人的に師匠について学ばれた後に中国留学でマスターしたということで,日本において書道を美術の範疇から排斥してしまった明治時代の誤った政策は今も日本の美術教育・研究に深い傷跡を残していると言えるのではないかと感じられてなりません。

 ともあれ,こちらの記事からも篠原貴之氏の作品には深い魅力があるということはしっかり伝わって来る反面,やはり芸術専門の記事ではなく単なる展覧会開催のニュースに過ぎませんから「同氏の芸術について深く知る」というレベルに至ることは叶いません。今回の展覧会は鹿児島市のマルヤガーデンズで2024(令和6)年6月30日まで開かれるということですので,九州在住の方やたまたま所用で九州を訪ねる方は是非足を運ばれるとよろしいでしょうが,僕は残念ながら今回はお邪魔することは叶いそうにありません。
 水墨画という芸術についてより深く知るためにも,現代における新しい水墨画を観ることで感動するためにも,また篠原氏という芸術家の創り出す作品について触れるためにも,僕も是非実際に展覧会にお邪魔したいところです。いつの日か,東京でも展覧会を開催して頂ければ,こんな嬉しいことは無いのですが…



篠原貴之さん個展 水墨画で新しい表現を追求 6月8日から 鹿児島市

 

 

※前田彩華氏の作品はこちらになります。