テンペラ画,これは観てみたい展覧会ですね(ღ✪v✪)!!

 僕は美術に興味を持ち始めてから,鑑賞のみならず勉強もするように心掛けています。これは以前から何度もお話しているとおり,知識というのは鑑賞の質を高めてくれるのみならず既に抱いている興味関心を掻き立ててくれる効果もあると僕は固く信じているからです。その「勉強」というのは殆どの場合には本を読むことですが,何年か前に或る美術大学で行われた「洋画コースの学生による卒業制作のプレゼンと大学教員による講評を一般に公開します」というイベントが面白そうで,事前予約をして参加したことがあります。
大学の卒業制作の絵画というのは大概の場合非常に大きなものなので,1つの教室に全員の作品を展示することは不可能です。そのため講評も「各部屋に幾つかの作品とそれぞれの制作者が待機していて,先生方と一般参加者とがそれらの部屋を回る」というツアー形式で行われました。各部屋の作品を興味深く鑑賞した後に先生方のお話を拝聴して「なるほど」と納得する,とても勉強になる良いイベントでした。
 そんな中に色合いといい絵具の風合いといい「これは日本画ではないのかな?(。・о・。)?」という作品がありました。しばらく観ていても,油絵具を使ったようには全く見えません。「(゜゜)(。。)(゜゜)(。。)?」と思っていると,学生さんが「これはテンペラです」と説明を始めました。先生方も「テンペラの特徴を巧みに生かした点がよろしい」といったことを仰っています。しかし僕には全く理解出来ません。これは僕があまりに無知で,どうやら全く場違いな所に来てしまったのだということは認識しましたが,最後に先生のお一人が僕たちに「何かご質問は?( ・ᴗ・ )?」と仰った際に思い切って「テンペラというのは何ですか」と質問をしてみました。学生さんはもとより先生方も一瞬「こいつは何を言っているのだ」というお顔をしていましたが,それでも気を取り直した先生が学生に説明を促します。学生さんも「これも勉強のうちだ」と理解して下さったのでしょう。「テンペラというのは顔料と鶏卵を混ぜた絵具で描かれた絵画です」と説明をして下さいました。僕が「つまり顔料と膠を混ぜた日本画の岩絵具に類似したものですか」と伺うと「その通りです」と,これは先生からのお答え。何とも気恥ずかしいことでしたが,それでも「聴くは一時の恥,知らぬは一生の恥」という言葉を思い出し「良かった。これで僕の無知が一つ治癒したのだ」と前向きに考えることに致しました。

 家に帰って来てから調べてみると,テンペラというのは初期のルネサンス絵画にも盛んに用いられた技法なのだとのことでした。現在では日本画家の皆さんが「絵具作りから手掛けるのが我々の苦労でもあり,楽しみでもある」ということを仰いますが,その昔は西洋画家も全く同じだったわけです。因みにテンペラから油彩への切り替えが行われたのは西暦1500年頃のようですね。たとえばサンドロ・ボッティチェリ(1445~1510)の「ヴィーナスの誕生」は1483年頃,ジョルジョーネ(1478~1510)の「眠れるヴィーナス」は1510年,ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(1490~1576)の「ウルビーノのヴィーナス」は1538年頃に描かれた,いずれも僕の大好きな作品ですが,この中で最も古いボッティチェリのものだけがテンペラ画で,後者2つは油彩画です。
 その後はテンペラ画の制作はほぼ途絶えてしまったようですが,20世紀に入ってワシリー・カンディンスキー(1866~1944)やパウル・クレー(1879~1940)といった画家たちによってふたたびテンペラの技法が用いられるようになります。そしてアンドリュー・ワイエス(1917~2009)によって数多くのテンペラ画作品が描かれたことで,テンペラという技法は完全に復活を遂げたのだということでした。
 先述のとおりテンペラ画の中には西洋画でありながら油彩画とは随分異なった印象を観る者に与える作品も多く,それらはしばしば日本画のような雰囲気を漂わせています。それが「画家自身が絵具を作る」という理由によるものなのかは僕には判りませんが,そういった作品の鑑賞は僕にとって非常に興味深く,以前から「テンペラ画をたくさん鑑賞出来る機会があれば面白いな」と思っておりました。

 どうやら今回,その願いの叶うチャンスがやって来たようです。現在,水戸市備前町の常陽史料館でテンペラ画家である高鳥達明氏の個展が開催中であることを知りました。同氏は20代半ばにテンペラ画に出合い,29歳でイタリア・フィレンツェへ留学して本格的に技法を学んだ方で,現在は日立市にお住まいだということです。高鳥氏の作品は同氏ご自身のお言葉を借りれば「なんでもありの空想の世界」で,具体的には「らせん状の腕で架空の古典楽器を演奏したり、花を食(は)んだりする様子が鮮やかな色彩で描かれ、鑑賞者に異世界をのぞいているような感覚を抱かせる」ものです。このような文章だぇを読んでいると何やらヒエロニムス・ボス(1450~1516)のような作品なのかと感じてしまいますが記事の作品写真を見ると高鳥氏の作品はとても温かな雰囲気を帯びていて,ボスの作品の持つ怪異性や辛辣な人間批判などというものとは正反対の存在だということが判りますね。テンペラ画云々を別にしても,是非観賞したくなってしまいます(๑•ᴗ•๑)
 因みのこちらの記事でも,テンペラ画について「日本画と油絵の中間のようなつやのない絵肌」という説明があり,テンペラ画を観て「何だか日本画のようだ」と思った僕の捉え方はどうやら妥当性の高いものだったのかなとも感じているところです(*^^)v

 こちらの展覧会は2024(令和6)年5月25日まで,毎週日・月曜日及び5月3~5日を除き毎日午前10時から午後5時まで開催されているとのことです。今の僕にとって水戸は少々遠いのですが,それでも時間を作って是非素敵なテンペラ画作品の鑑賞にお邪魔したい。そう願っております♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪



テンペラ画 幻想的世界 茨城・水戸、高鳥さん作品展 らせんモチーフ25点