これ,とっても良いアイデアかも(⋈・◡・)

 皆様は林業にお詳しいでしょうか。或いはこれをお読みの中には林業に従事しているプロの方もいらっしゃるかもしれませんが,そういう方を別にすると林業というのはなかなか馴染みの無い分野ではないかと思います。「どんな職業でも,それは同じだよ」とのご指摘もあろうかとは存じますし,お仕事に伴うご苦労や喜びなどについては全くそのとおりでしょう。しかし「そもそも,その職業の方はどういうことをしているのか」についてはそれなりに判ることの方が多いのではないか。たとえば農業とはどんなものか,たとえ農家でなくてもその概要については殆どの人が知っているでしょう。或いはコックさんのお仕事とはどういうものかについても同様です。しかし林業についてもそれらのお仕事と同レベルの知識が社会に広く共有されているかというと,僕は些か疑問です。
 かく言う僕も大学院で林業を学んだにも拘らず,最初は林業というのはどういうものなのか全く判りませんでした。「林業を専攻する大学院生なら,林業について熟知しているだろう」と思われて専門家の方たちから難しいお話を振られることも多かったのですが僕には全然理解出来ず「これでは研究どころの話ではない」と一般向けの入門書から始めて林業に関する文献を読み漁り,学部生向けの講義を履修し,何とかお話が聴いて判る程度にはなったというところでしょうか。無論これは,僕が特に甚だしい無知だったという面もあるとは思いますが。

 林業に従事していらっしゃる方にお話を伺うと皆さん「遣り甲斐のある仕事だ」と仰いますし,また世の中にとって林業が極めて大切なお仕事であることは論を俟ちません。林業についての知識が広く普及すれば「自分も林業に従事しようか」と就職先の一つとして検討する人も出て来るでしょうし,また国や地方自治体などによる林業の支援育成について理解を得ることも容易になることでしょう。ではそうした知識を広く普及させるためにはどうすれば良いでしょうか。もっとも効果的な方法は「人々に,特に次世代を担う子供たちに実際に体験してもらう」ことでしょう。先述の農家や調理師に関してはそのお仕事の概要が漠然とではあっても人々に知られているのには,学校や家庭で野菜栽培や調理などの実体験を積む機会があることも一躍買っているのは間違いの無いところです。
 しかし林業において,これはなかなか困難です。そもそも日本における林業というのは人里から遠い山岳地帯で行われることが多い上,用いられる機材についても徹底的な訓練をしていない素人に使わせるなど危なくて出来るものではありません。教職員や周囲のサポートさえあれば比較的容易に実体験を積める野菜の栽培や調理実習とは異なる面が大きいのです。

 しかし今回"ZORING"というゲームがあることを知りました。これは林野庁東北森林管理局盛岡森林管理署に勤務する谷沢風音氏という若手官僚によって考案実現された,98枚のカードを使い4~5人で対戦するゲームです。カードには林業に必要な行程が一つずつイラストで描かれた「事業」・病虫害や鹿の食害など森に被害をもたらす問題が描かれた「被害」・虫の被害を防ぐ薬や鹿から森を守るハンターが描かれた「対策」などの種類があり,地面を整える地拵から主伐までを疑似体験出来るようになっています。実際に林業を体験することが不可能でも,こういったゲームを通じて林業の概要を人々に普及させることが可能なのではないか。
このように申し上げると「そうか(。´・ω・)?」という疑問をお感じの方も多いことでしょう。これは単なるゲームであって,そういったものを体験しても林業の概要を知ることには繋がらないのではないか…と。しかしゲームというのは馬鹿にしたものではありません。僕の子供時代には「ファミコン」,正確には任天堂の「ファミリーコンピュータ」というテレビゲームが大変な人気でした。そのファミコンのソフトの中には子供が喜ぶようなシューティングゲームやアクションゲーム,子供も実際に体験している野球やサッカーなどの他に,子供が実際にプレイすることは少ないであろう「ゴルフ」などというものもありました。当時はゲームソフトの種類が少なかったせいもあってそんなソフトでも販売されれば購入する子が多かったのですが,結果としてどうなったかというと多くの子供たちがゴルフの大まかなルールを覚えてしまい,日曜日になるとお父さんと一緒にプロゴルフトーナメントのテレビ中継を見ては週明けになると学校で「昨日テレビで観た誰それは凄い選手だ」などと話題にするようになったのです。実は僕もその一人で,僕は今もゴルフはプレイ致しませんが,おおよそのルールは判ります。
 無論,空調の効いた室内でゲームをやり込んだところで,酷暑酷寒のなか険しい山を上り下りして行う林業の苦労や,実際にやり遂げた際の喜びなどは判らないでしょう。しかしそうした点については可能な範囲で行える見学で補えば良い。またその見学を実施するにしても,目の前の林業従事者たちが何をやっているのか全然判らないのと「これは何々という作業だな」と理解しながら見るのとでは教育効果は全く違ったものになることは疑い有りません。実際,谷沢氏が小中学校で児童生徒に"ZORING"をプレイしてもらったところ「(林業の)流れを知ることができて良かった」ということで,その効果は決して小さくないようです。無論,大人がプレイしても同じような効果を期待出来るでしょう。

 林業についての理解を深めるのに有益なゲームを普及させることで,人々に林業についての知識を普及啓発させられたら,これは本当に素晴らしいことです。僕も"ZORING"をプレイしてみたいし,勤勉で意欲的かつ優れたアイデアを持つ谷沢風音氏に対しても心からの敬意と期待とを抱いているところです♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪



対戦型カードゲームで森林づくり 若手職員が考案、注目集める
https://mainichi.jp/articles/20240417/k00/00m/040/270000c
https://news.yahoo.co.jp/articles/8af1543a82f68bceb6ef34a6ba91d11b3b5348ba