今まで知らなかった沢山の傑作に出会えるでしょうか。是非ともお邪魔したい展覧会です(⁎˃ᴗ˂⁎)

 北欧というと,僕などは「優れたデザインを生み出した国」というイメージをまず最初に抱きます。この文章をお読みの皆様の多くも,僕の感覚に同調して下さるのではないでしょうか。スウェーデン生まれの企業”IKEA”の家具や室内製品などは日本でも大人気ですね。
 しかしそれ以外の芸術というと,僕などはなかなか思い出すことが叶いません。音楽では交響詩「フィンランディア」や交響曲第2番で知られるフィンランドのジャン・シベリウス,絵画では東京都美術館で展覧会の開催されたデンマークのヴィルヘルム・ハマスホイの作品を鑑賞したことがありますが,その程度でしょうか。あとは写真でのみ作品を観たことのあるフィンランドの建築家アルヴァ・アアルトの名前を思い出すのが僕にとっての限界です。クラシック音楽の鑑賞歴だけは長い僕はデンマークのカール・ニールセンやスウェーデンのクルト・アッテルベリの名前ならば耳にしたことがありますが,肝腎の楽曲を知らないのですから,これは「知っている」のうちには含まれないでしょう。

 僕がこれほど知識不足なのは無論,僕自身の無学と無教養とが最大の要因です。音楽や美術以外の文化全般に話題を広げても,北欧の人といって僕が思い付くのはデンマークの童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンくらいなものです。僕ももう若くないのですから,それなりに幅広い知識くらい身に付けておかないと本当にみっともないと言わざるを得ません。しかし自分の怠惰を棚に上げるような発言になってしまいますが,日本においては北欧の文化があまり親しまれていないということも僕の知識不足の一因なのではないでしょうか。北欧の文化がどの程度日本で親しまれているか。最近は東京が「世界各国の食文化を味わえる美食の都」として世界的に注目されていますが,北欧料理のお店というとつい先日閉店してしまったお店を加えても東京に2店あるだけです(他に横浜に1店)。北欧神話についてはこれは日本でもそれなりに広く知られていますが,これはドイツにおいても北欧神話が「ゲルマン民族全体の神話」としてロマン派の時代以降に大きな関心を向けられていたことによるものではないか。ドイツは日本の近代化に甚大な影響を与えた国ですから,ドイツで関心を向けられていたものならば日本でも広く知られていて不思議はありません。
 この「北欧諸国に関して全くの無知」というのは美術好きとして非常に残念なことです。「凡そ何処の国・何処の社会にも優れた文化が存在し,その文化の中には美術も含まれる」というのはあまりにも当然の話ですが,こと北欧について言えば既に家具や室内装飾などにおける秀逸なデザイン作品が全世界で広く評判になっているのですから尚更です。デザインというのは芸術のジャンルで区分すれば美術の一種ですので「北欧には優れた美術が有るのだ」ということは容易に推測がつくところですね。そうした優れた美術のある国々の絵画に触れられれば,それはどれほど素晴らしい芸術体験になることでしょうか。

 今回,そんな北欧の美術のうち絵画に存分に触れられる絶好の機会がやって参ります。東京・新宿のSOMPO美術館で2024(令和6)年3月23日から6月9日まで「北欧の神秘─ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画」という,展覧会名のとおり北欧諸国のうちノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画を取り上げる展覧会が開催されることになりました。この展覧会で取り上げられるのは19世紀から20世紀初頭までの作品約70点ということで,この時期は「ナショナリズムの高まりを背景に、それまでフランスやイタリア、ドイツの美術を模範としていた北欧の画家は、母国の自然や歴史、文化に目を向けて作品を手がけるようになった」のだということで,まさに北欧の国々において「自分たちらしい」作品が作られるようになった時期だと言えるでしょう。そういえば上述のジャン・シベリウスの交響詩「フィンランディア」もまた,1899年に作曲された楽曲です。当時フィンランドはロシアの植民地とされていましたので,恐らくはナショナリズムの動きは特に強かったに違いありません。
 こちらの記事でも,幾つかの作品が写真で紹介されていますね。ロベルト・ヴィルヘルム・エークマンの「イルマタル」を観て,僕は構図も場面も全然似ていないにもかかわらず山本芳翠の「浦島図」を思い出してしまいました。またニルス・クレーゲルの「春の夜」にはフィンセント・ファン・ゴッホを連想させられてならぬ思いです。ゴッホを好む人ならばクレーゲルの作品もきっと好きになるのではないでしょうか。そしてエウシェン王子の「工場、ヴァルデマッシュウッデからサルトシュークヴァーン製粉工場の眺め」にはクロード・モネを連想させられ「スウェーデンには印象派の大作家が居たのだな」と心の底から実感させられる思いです。因みにWikipediaによるとエウシェン王子とはスウェーデンの王族(国王オスカル2世の四男)にしてネルケ公爵だった人物で,日本の秋田藩主である佐竹義敦(曙山)や宇都宮藩主である戸田忠翰と同様に「殿様にして大画家」という方が外国にもいらしたのだなどと何やら興味深くも感じさせられてもしまいました。

 これら紹介された作品以外にも,きっと多くの優れた作品が展示されるに違いありません。「北欧の神秘─ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画」,是非お邪魔したいと思いますし,開幕が今から待ち遠しく感じられてなりません♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪



“北欧絵画”の展覧会「北欧の神秘」SOMPO美術館で - 神話や民話、自然などを描いた絵画が一堂に