実に楽しみな構想です。それと同時に,僕としては更に有益な事業にするべく是非とも意見を申し上げたい点のあるプランでもあります。

 臨海副都心は近年多くの商業施設などが設けられているなど現在でも人口が増え続ける躍進著しい地域ではありますが,残念ながら交通のアクセスがあまり良くありません。「りんかい線」と「ゆりかもめ」という2本の鉄道はありますが,前者は新木場と大崎という少々都心から外れた場所同士を結んでおり,一方の「ゆりかもめ」は都心に所在する新橋を起点にはしていますが最高速度も速くない上に遠回りのルートを取っていることもあり,どちらも都心へのアクセスという点では必ずしも有力とは言い難いものがあります。このため現在では新橋と臨海副都心とを直結する「東京BRT」というバスによる輸送が行われていますが,輸送力のあまり大きくないバスでは更なる人口増には対処しきれないと予想されています。
 このため,東京駅と臨海副都心とを直結する新しい鉄道路線「臨海地下鉄」の建設が東京都によって提唱されていました。提案した東京都自身が交通局を有しているために実現の暁には都営地下鉄として開業するのかとも思われていましたが,このたび「りんかい線」を運行している東京臨海高速鉄道株式会社による運行が決定したということが報道されています。同社は運行のみを担当し,路線の建設については独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」が担当するという方式での整備が予定されているということで,現在のところ2040(令和22)年ころの開業が予定されています。全くの偶然ではありますが同年は皇紀2700年に当たるので,或いは同線の開通は日本の建国2700年を寿ぐのに相応しい慶事になるかもしれませんね。

 この新たな地下鉄の開業によって臨海副都心は東京駅と直結して交通利便性が著しく向上することは疑い有りませんね。東京という都市を更に良いものにすべく,僕もこの地下鉄の建設には大賛成です。先ほどは「2040年に開業すれば日本の建国2700年を寿ぐのに相応しい慶事になる」などと申しましたが,仮に開業の前倒しが可能であれば皇紀2700年に拘らず1日でも2日でも早く開業して欲しいものだと思ってしまいます。
 とはいえ,こちらの臨海地下鉄,僕としてはただ建設するだけではなく「こうして欲しい」という2つの希望があります。まず1つ目はこの記事の末尾にも触れられている「つくばエクスプレス(以下「TX」)との接続構想」の実現です。TXは現在,東京・秋葉原と茨城県つくば市とを結ぶ路線ですが,本来は秋葉原ではなく東京駅を起点とすることが予定されていました。現在でもそのプランが放棄されたわけではなく,現在6両で運転されている列車の8両化が終わったら東京駅への延伸を行うことが計画されています。そのTXと臨海地下鉄との直通運転が行われれば,これはTX沿線の住民にとって著しい利便性の向上を図ることが可能でしょう。国際展示場は学術的な研究発表を含む各種イベントが積極的に行われている所ですから筑波研究学園都市と直結されればそれだけでも大きなメリットですし,TX沿線の八潮・六町・青井などの各駅も東京駅・新銀座駅といった都心と乗換無しに移動することが可能になります。加えて言えば現在の秋葉原駅はJR線やTXの他に東京メトロ日比谷線・都営新宿線(岩本町駅)の集まる乗換駅ですが,地上を走るJRは別にしてもTX・日比谷線・都営新宿線の乗換には階段を使って地上に出る必要があり,あまり便利ではありません。東京駅までの延伸時には鉄道トンネルだけではなく地下道も建設することで,階段を歩いたりまして地上に出たりすること無く乗換が出来るようになれば利用し易くなりバリアフリー化にも大いに有益であることは間違いありません。
 そしてもう一つは,臨海地下鉄と「りんかい線」との間でも直通運転を行って頂きたいということ。りんかい線はJR東日本の羽田空港アクセス線との乗入運転をすることが予定されており,臨海地下鉄と「りんかい線」との直通をも行えばTX沿線と羽田空港ともまた直結されることになります。これは単にTX沿線の利便性を向上させるに留まる話ではありません。TXの終点である筑波研究学園都市は言うまでも無く日本の学術の中心であり内外の叡智の集う場所なのですから,これは日本の学術振興にもまた極めて有益なことであるに違いありません。現在の計画では臨海地下鉄の「有明・東京ビッグサイト駅」はりんかい線の国際展示場駅のすぐ近くに設置されるに留まるようですが,是非とも線路を繋げて筑波研究学園都市と羽田空港とを乗換無しで行き来できるようにしてほしいところです。「乗換があっては駄目なのか」とお考えの向きもあるでしょうが,飛行機の利用時には大きな荷物を持っていることも多いのですから乗換の有無は利便性を大きく左右します。そもそもJR東日本の羽田空港アクセス線は常磐線とも直通を予定していますから,仮にりんかい線との乗換が必要ということであれば「既にTXと常磐線との乗換が可能な北千住駅で乗り換えても同じだ」ということになり,臨海地下鉄は本来得られる筈の利用者を大きく逃すことにもなりかねません。幸いにして臨海地下鉄も「りんかい線」と同じく東京臨海高速鉄道株式会社によって運行されることになったのですから,この点については是非とも実現の方向で検討して頂きたいところです。

 東京を大きく変えることになるであろう臨海地下鉄,その開通に大きな期待を寄せるとともに「TX及び『りんかい線』との直通運転を行うことで,東京のみならず関東一円に,そして全世界にその建設のメリットを拡大させてほしい」と僕は強く願うばかりです。



「臨海地下鉄」は東京臨海高速鉄道が運行へ…りんかい線と接続、羽田空港アクセス向上図る