これは興味津々の展覧会です。是非鑑賞に行きたいし,それと同時に美術鑑賞においては「広い視野を持つ」ということを忘れてはいけないとも感じさせられました。

 印象派の絵画というと,日本人に非常に好まれていることがよく知られていますね。歴史や神話を描いた作品と異なり風景を描いた作品が多くヨーロッパの文化についての知識を習得せずとも親しむおが用意であること,また印象派自体がジャポニスムという形で日本絵画の影響を受けたこともあって日本人には親しみやすさを感じさせることなどがその理由に挙げられています。かく言う僕などは「ジャンルを問わぬ美術鑑賞」ということを常に心掛けていること,またヨーロッパの歴史や神話に就いて積極的に学びたいと思っていること,さらには生来へそ曲がりな性質の持ち主であることなどから「印象派以外を鑑賞しないというのでは駄目だ」と思っておりますが,印象派自体を否定しようなどという気は全くありません。印象派の絵画を鑑賞すると「良いなぁ(ღˇ◡ˇ*)♡」と感じさせられることについては僕も世間一般の人々と全く同じです。そもそも「僕はジャンルを問わぬ美術鑑賞を心掛ける」とは申しましたが「特定のジャンルを排除する,鑑賞しない」などとは一言も申しておりません。印象派の絵画もまた優れた芸術作品であることには何の異論もありませんし,美術鑑賞の一環として印象派の作品をも大いに心躍らせながら鑑賞しているというのが正直なところです。

 さて「印象派」というと,僕などは「フランスの芸術運動」というイメージを抱きます。これをお読みの皆様の多くも,僕と同じではないでしょうか。これはたしかに歴史的にも正しい認識で,モネやルノワールなどの印象派として知られる画家たちはそもそもフランス人であり活躍したのもフランスにおいてですし,また「印象派展」という初期の印象派の展覧会も全8回全てがパリで開催されました。しかしまさにその事実からも明らかなとおり,当時のパリというのは世界最先端の芸術の都でした。大勢の留学生たちがパリで美術を学んでおりましたし,また世界各国の画家たちもパリにおける美術の動向に注目し参考にしていたわけです。当然,フランスにおける美術の動向は他国の美術にも大きな影響を与えました。
 今回こちらの記事で紹介されている「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」という展覧会においては,まさにそのフランス国外,具体的には主にアメリカにおける印象派の動向や具体的な作品を取り上げたものです。パリにおける印象派の作品を最初に目にし自らの作品にも取り入れたメアリー・カサットやチャイルド・ハッサム,独自に解釈した印象派の技法を用いてアメリカ東部の風景を描いたジョゼフ・H・グリーンウッド,そして開拓の進むアメリカ西部の風景を画題に取り上げたデウィット・パーシャルなど,不勉強な僕は今まで名前すら知らなかったアメリカ人画家たちの作品が大々的に取り上げられていると聞き,それらは一体どんな作品なのだろうか,是非観賞してみたいという思いに捉われてしまいました。

 また今回,アメリカにおける印象派の作品が紹介されるということから「広い視野を持つことで,より色々な美術作品に触れることが出来る」という当たり前のことにも改めて気づかされました。僕などは今まで「印象派といえばフランス」という話に何の疑問も持っておらず,それ以外の国で制作された印象派の絵画に目を向けることがありませんでしたが,冷静に考えてみれば一国内でのみ流行したモードというわけではないのですからフランス国外でも印象派の作品が制作されていたであろうことは明らかです。そしてその中には極めて優れた作品も存在する可能性は極めて高い。いや,存在しない方が不思議でしょう。美術の才能のある人はフランスに限らず大勢存在するのですから。そうした作品の存在にも目を向け鑑賞の対象にすることで,我々はより深く充実した美術体験が可能になるに違いありません。これは決して,印象派のみに限ったお話ではないでしょう。
 まずは「アメリカの印象派作品」を鑑賞することで,視野を広げていく第一歩にしたい。2024(令和6)年4月7日まで東京都美術館で開催されている「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」,なるべく早いうちに足を運びたいと思っております。



“フランスからアメリカへ”印象派の展開をたどる展覧会「印象派 モネからアメリカへ」東京都美術館で