実に興味深い取組ですね。

 皆様は国産ワインというとどちらの地域を思い浮かべられるでしょうか。山梨県や長野県・北海道というのが順当なところでしょう。しかし茨城県もまた,早いうちからワインづくりが行われた地域です。現在も残る牛久シャトーというのは,これまた現在も東京・浅草に現存する神谷バーを創業した神谷傳兵衛によって現在の牛久市に1901(明治34)年に設立された本格的なワイナリーです。その後も量的には少ないながら,茨城県内では現在に至るまでワイン醸造が継続されています。

 こちらの記事で紹介されているのは,つくば市内で醸造されたワインを,同市内に今も残る古民家で頂くという旅行プランです。企画したのは「ホテル日航つくば」。参加者は葡萄の剪定を体験した上で,古民家でホテルの用意したお弁当を頂きながらワインを頂けるという取組です。
 こうした取組は,地域に残る古民家を観光資源として活用し,かつ地域で生産された産物の知名度を人々に広く知ってもらうという意味でも非常に優れた取り組みと言えるでしょう。古民家は歴史的にも貴重な遺産と言えますがそれを維持するコストを捻出するのは所有者にとって大きな負担であり,放置しておけばいずれ取り壊されてしまうことは火を見るよりも明らかです。こうした方法で活用すればその「お荷物」が一転してお金を稼ぐための道具として役割を果たすことになる。少なくとも維持修繕費を稼げれば「どうやって守り抜くか」という問題については解決することも可能です。またワインについても「茨城のワインです」というだけではなかなか皆様は「賞味してみよう」という気持ちにならないでしょうが「葡萄畑の見学や農業体験の後,地元のお料理とともに頂ける」となれば「それでは足を運んで飲んでみよう」という意欲を掻き立てることも出来るし,それで美味しいと思って頂ければ今後の販売促進にも繋がります。ホテルが調理するお弁当についても,茨城県産の食材を活用すれば同じ効果を期待出来るのは言うまでもありません。

 更に言えば,この「産地でワインを味わう」という取組の効果はそれに留まるものではなく,工夫次第で観光客に長時間滞在して頂くという効果も見込めるでしょう。茨城県は優れた観光資源に恵まれておりますが一方で東京という大都市からあまりに近く,仮に観光客を呼んでもあっさり日帰りされてしまうということが珍しくありません。こちらの記事の取組ではワインを頂くのも昼間なので日帰り観光を狙ったものだと思われますが,たとえばこれを「夕食にワインを出し,ホテルに宿泊してもらう」という形に改めてはどうか。近場で楽しい週末を過ごしたいという都会人の需要を満たすようなプランを組むことも決して不可能ではないでしょう。ホテルに温泉などが沸けば尚更です。また提供するお酒もワインに限る必要は無く,最近評判の地ビール・或いは歴史的に評価の高い地酒などでも同じことが可能です。

 こちらのツーリズム企画,色々と応用が利きせることで地域振興に大いに役立てることが可能なのではないか。僕はそのように感じ今後にも注視していきたいと思っております。



地元ホテル、ワイナリーとコラボ【つくば 古民家利活用】上 
https://newstsukuba.jp/47591/23/10/