これはやってみたい(⋈・◡・) でも,若い頃にこのレシピを知っていればなぁ(。・_・。)。oO

 昔々,僕がまだ小学生だった頃のお話です。当時は夏のお中元や冬のお歳暮というのが今よりも随分と活発に行われていました。季節になると父と母も「誰さんに何を贈ろうか」などということを一生懸命相談し合っていましたし,また我が家にも随分と贈り物が届いたものです。これは無論我が家に限られたことではなく,当時はそのように贈り贈られというのが社会の常識の一環として行われていたものです。今でもお中元・お歳暮という風習が消滅してしまったわけではありませんが,当時とは比べ物にならぬほど下火になりました。これは僕の世代以上の方ならば「そのとおりだ」と皆さん口を揃えて下さることでしょう。
 そんなお中元やお歳暮では何が送られてきたのかというと,大抵は食べ物です。時には通常見掛けぬような珍しいものが贈られてくることもあり,たとえば洋梨やブルーベリーなどの当時はなかなかお目に掛かれなかった果物の味を僕が覚えたのは,そうした贈り物の缶詰やジャムを通じてです。両親は福島県の知人から贈られてくる雲丹の瓶詰をとても楽しみにしていて,毎年季節になると「こんな美味しいものがこの世にあるとはね(ლ˘╰╯˘).。.:*♡」などと言っておりました。とはいえこれはかなりのリスクのある行為で,特に相手の好みがよく判らない場合には珍しい食べ物を贈っても喜ばれるとは限りません。我が家でも東京の親戚から当時は滅多に見掛けなかったピクルスの詰め合わせが贈られてきて,開封した父が「・・・(・ω・`)」となっていたのを覚えています。勢い,大概の人は無難に誰の口にも合うような贈り物を贈ることになりますが,そうすると今度は貰い手の側で同じようなものばかりが手元に届くということになったりもしたものです。

 かく言う我が家もその例に漏れません。店を開けるほど大量に同じもの,具体的には夏には素麺・冬には鯵の干物が届いて「さて(・〜・´)」と感じさせられるのが毎年の年中行事のようなものでした。それでも素麺は暑い日の昼食に重宝するのでそれほどでもありませんでしたが,冬の鯵の干物にはかなり閉口させられました。嫌いだったわけではありません。両親は鯵の干物を大好物にしていたし,息子の僕も今ほど魚の美味を理解出来たわけではないにせよ「美味しい」と感じるくらいの味覚は持ち合わせておりました。しかも届くのは贈り物ですから,身がふっくらとして噛みしめれば魚の滋味が染みだしてくるような上等な品ばかりです。しかしそんな上等な品であっても毎日毎日鯵の干物ばかりが食卓に並ぶと「・・・(。•́︿•̀。)」となってしまうのは避けられない所でした。何しろ鯵の干物といえば焼いて食べる以外に食べ方が無かったのですから。しまいには僕が音を上げて「暫く干物はお休みにしようよ」と言い出し,父も「そうだな。干物は保存食なんだから急いで食べることも無いだろう」などと同調し始めるという体たらくで,内心では父や僕と同じことを考えていた母も次の日には別の料理を作るもののその翌日にはまた干物に逆戻りというのも,年の暮れの我が家のあまり嬉しくない風物詩だったと言えるでしょう。

 そんなわけで鯵の干物というのは少々困った贈り物だったわけですが,今回こちらの「干物のアクアパッツァ」のレシピを見て大変魅力的に感じると同時に「当時これを知っていれば,事情は全然違ったのに」という思いをも抱いてしまいました。当時はアクアパッツァなどという食べ物は全く普及してはおりませんでしたが,僕はイタリアの食文化を紹介するテレビ番組でその存在を知り「是非一度味わってみたい」と願っていただけに尚更です。ただ,普通の干物でアクアパッツァなど作れるのでしょうか。以前にも干物でアクアパッツァというお話は聞いてこちらでも紹介させて頂きましたが,それはアクアパッツァ用に特別な味付けをして作られていた干物を使うものでした。一体どのように作るとどんなものが出来るのか,早速詳しく見てみることに致しました。
 まずは下拵え。鯵の干物のゼイゴを鋏で取り除いて皮に薄力粉をまぶし,アサリは50℃のお湯に15分漬けて砂抜きしたら水洗いしザルに取って水気を切っておきます。そして大蒜は芽を取り除き薄切りにし,ミニトマトとアスパラガスは食べやすい大きさに切っておきます。それが済んだらフライパンにオリーブオイルと大蒜を入れて弱火で加熱し,香りが立ったら大蒜を取り出します。そして中火にして皮目を下に鯵の干物を入れ,焦げ目がついたら折りたたんで弱火に。ミニトマト・アスパラガス・アサリを入れて白ワインを回し掛け,フライパンに蓋をして5分加熱。一度蓋を外して野菜をスープに沈め,再度蓋をして3分加熱したら完成。頂く際に好みで胡椒とパセリを掛けても良いということです。

 これは美味しそうな上に,実に目新しいのがよろしいですね(๑˃̵ᴗ˂̵) 何よりも鯵の干物を焼いただけではどうやっても和食にしかならないところをイタリア風に頂くというのが有り難い。もし山のように鯵の干物を貰っても,この食べ方を知っていれば全然困らないどころか頂き物を使い切ってしまって買いに行く羽目になったかもしれません。恐らくは父も母も大喜びで頂いたことでしょう。
 今ではお歳暮に鯵の干物を頂くことはありませんが,今度買って来てでも試してみたい。こちらのアイデアを提唱して下さった出雲市の干物店主である岩田響子氏と実際に判り易いレシピを紹介して下さったともゆみ氏とに深い感謝を覚えつつ,僕は今そんなことを感じさせられております♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪



【老舗干物店3代目】が発明!干物で「アクアパッツァ」に挑戦♪半分の調理時間でうま味は倍以上なのだ