テキスタイルの源流を知ることの出来る展覧会,是非駆けつけようと思います(๑˃̵ᴗ˂̵)

 僕が美術好きであること,なるべく特定のジャンルに拘らぬ鑑賞をしたいと常々思っていることについては,皆様にも常々申し上げているとおりです。ですから「絵が好きなんだってね」と話しかけられることは多いし,たしかに美術の一ジャンルである絵画は大好きですから,そのたびに「はい,そうです」と答えているものの「絵画だけじゃないんだけどなぁ(・~・´)」と感じることも少なくありません。

 とはいえ,僕の美術鑑賞が実態において圧倒的に絵画に偏っていることは疑いも無い事実です。それ以外のジャンルというと,たまに陶芸の展覧会を鑑賞する程度でしょうか。といっても,僕が長年の理想を放棄して絵画のみの鑑賞に切り替えたわけでは全くありません。絵画の展覧会に比べて,それ以外のジャンルの展示の機会は本当に少ないのです。僕は若手美術家の作品にも強い関心があり,その中には現役の学生さんもいらっしゃるので,以前に大学の文化祭で作品を展示していた工芸専攻の学生さんに伺ったことがあります。「何故,絵画専攻の人ほど展覧会を開催しないのか」「学生さんたちの展覧会でも,聞けば絵画に限らず出展を歓迎しているという。出来れば絵画以外も鑑賞したいと思っているのは,きっと僕だけではないと思う」と。答えはいたってシンプルで説得力のあるものでした。「絵画に比べて,制作に時間が掛かるのだ」と。そういえば美術大学の文化祭にお邪魔すると,絵画専攻の方たちが自主制作の新作を展示しているのに対し工芸専攻の方たちは授業で制作した作品をそのまま展示していることが稀ではありません。「なるほど,絵画以外のジャンルの美術品は新作を作ろうにも時間が掛かるのだな」と,残念には思いながらも大いに納得させられました。

 そもそも作品の性質上制作に時間が掛かるのでは制作者たちにいくら催促をしても無駄なことで,展示の機会も少なくなってしまうのは全く止むを得ないことです。観る側としては「アンテナを高くして,数少ない展示の機会を大切にする」といった方法で鑑賞の機会を確保するしかありません。そんなことを思っていたら,今回「恋し、こがれたインドの染織 ―世界にはばたいた布たち― 」という展覧会が東京・虎ノ門の大倉集古館で開催されていることを知りました。展示されているのはインドの綿布と聞き「これって,昔世界史で勉強したインドキャラコのことだ٩(๑˃̵ᴗ˂̵๑)۶ °」と非常に驚くと同時に是非観てみたいと強く強く感じてしまいました。
 インドの綿布は世界最上級といわれ,大航海時代以降のヨーロッパでも最高の布として大変な評判を有しておりました。イギリスが最初はインドキャラコ貿易で莫大な富を得,同じような布を英国内で作りたいという取組から興った産業革命で今度は自ら生産したキャラコで更に利益を上げたという史実を,僕は中学校で習いました。その過程でインドの木綿織物産業が破綻し,それをカール・マルクスが「職工夫の骨でインドの平原が白くなった」と辛辣な言葉で表現したことも。しかしそこまで学んでおきながら「ではインドキャラコというのはどういうものなのか」については全く知らずまた知ろうとも思わなかったのですから,当時の僕が美術には本当に何の関心も無かったことがよく判りますね(・ω・`)
 今回調べてみると「キャラコ」というのは平織の綿布のことで,それだけならば特に珍しいことも無いでしょうが,その色と模様の美しさが高く評価されたのだということです。こちらの記事にも「動物繊維の絹や毛に比べて植物繊維の木綿や麻などを美しく染めることは難しく、17世紀以前に赤や黄色を鮮やかに発色させ、しかも洗っても色落ちしない布を作る技法はインドにしかありませんでした。美しい色彩と文様の木綿布に異国の人々は恋しこがれたのです」「美しい色彩でエキゾチック、しかも色落ちもしない布として人々を魅了しました」とその評価の理由が端的に記されていますね。

 こちらの展覧会ではそのインドキャラコの布地そのものやそのキャラコを利用して作られた衣服・そして江戸時代の日本で制作された模倣品などが大量に展示され,一大テキスタイル展の様相を見せていると言える状況のようです。その美しさを堪能すると同時に「キャラコとはどういうものか」といった事柄や,そのキャラコの色合いや模様の根源であるところのインド美術についても学べるのではないか。そう考えると「今すぐ家を出て,大倉集古館に飛んでいきたい(๑˃̵ᴗ˂̵)」という思いが沸いて参ります。
2023(令和5)年の10月22日まで開催されているこちらの「恋し、こがれたインドの染織 ―世界にはばたいた布たち― 」,お邪魔するのがとても楽しみです♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪



【レビュー】「恋し、こがれたインドの染織 ―世界にはばたいた布たち― 」大倉集古館で10月22日まで 綿布の源泉はインドにあり