興味深い展覧会ですね(⋈・◡・)

 エドゥアール・マネは「草上の昼食」や「オランピア」などの作品で有名な19世紀フランスの画家です。「印象派の先駆者」としてもよく知られていますね。実はマネ自身は印象派を自認したことは無く,当時行われていた「印象派展」にも参加せず「サロンでの入選」という旧来の方法でのキャリアアップにチャレンジしそれに成功もしているのですが,それでも当時から印象派の一員,或いはリーダーと目されていたようです。実際,同時代の風俗を描いた点や遠近法を無視した描写など,当時の常識を覆すような絵画によって美術の世界に革命を起こした芸術家であるといえるでしょう。

 そのマネは,日本でも人気の画家ですね。そもそも日本では印象派の評価が高く,どこの美術館でも印象派展を開催すると大勢の観客がやってくるというお話をしばしば耳にします。印象派の絵画については「歴史画ではないのでギリシア神話やキリスト教・西洋史の知識が無くても理解し易い」「ジャポニスムを通じて日本美術の影響を受けているので親しみ易い」といった理由で日本人向きなのだということがしばしば指摘されます。実は僕は最近「日本人には印象派が向いている」というお話については「本当にそうだろうか」という疑問を持っていて,それについても近いうちに論じたいと思っているのですが,少なくとも日本で印象派の絵画が好まれていることは全くの事実ですし,その理由として挙げられている「鑑賞に際して西洋の神話や歴史の知識をあまり必要としない」「日本美術の影響を受け,同じような表現技法が使われている」という2点についても妥当な指摘だと思います。
 では印象派の好まれる国である日本において制作された美術作品は,やはり印象派からの影響を受けているのでしょうか(・・?) 実はこの点について,僕は今まで考えたことがありませんでした。しかし冷静に考えてみれば,これは「受けている」と考えるのが合理的ではないかと思われます。無論,日本には存在しなかった洋画は勿論のこと,洋画に対抗して日本独自の美術を追求して発達した日本画もまた西洋画をはじめとするヨーロッパ文化の大きな影響を受けているのは当然ですが,それに留まらず特に印象派の影響を。日本で生まれ育った画家たちもまた日本の文化に育まれてきた人々である以上,彼らの好みが一般の日本人と極端に違っているというのは考えにくい話であり,好みに合う絵画からは何らかの影響を受けるというのが道理というものでしょう。また日本人画家の作品は主に日本人によって鑑賞されるわけですから,画家たちが制作にあたって観る者の好みを意識するというのも大いに有り得る話です。

 9月4日から11月3日まで練馬区立美術館で「日本の中のマネ―出会い、120年のイメージ」という,エドゥアール・マネの作品が日本においてどのように受容され,また日本の絵画に影響を与えてきたかが考察される展覧会が開催されるということで,やはり日本の美術はマネをはじめとする印象派の影響を濃厚に受けているということは間違い無い事実のようです。こちらの記事では幾つかの展示作品が紹介されています。石井柏亭の「草上の小憩」は,何だかマネの「草上の昼食」と似たような雰囲気の作品ですね。とはいえ登場人物は全員が着衣で,マネよりもずっと穏当な雰囲気ですが。一方,安井曾太郎の「水浴裸婦」については,最初ポール・セザンヌの「大水浴」みたいだと感じた後に裸婦たちの姿から今度はオーギュスト・ルノワールの「大水浴図」を連想させられ,僕としてはマネになかなか辿り着かないのですが,やはり印象派の強い影響を受けていることは間違い無いと思います。また森村泰昌氏の「肖像 少年 1,2,3」は以前にたしか横浜美術館で鑑賞した覚えがありますが,これがマネの「笛を吹く少年」のパロディなのは一目で明らかですね。そして福田美蘭氏の「帽子を被った男性から見た草上の二人」は,なるほど「草上の昼食」に描かれた人からはこのように見えるに違い無いと大いに納得すると同時に,こうした作品を発案したという事実をとても面白いと感じました(◍•ᴗ•◍)

 こうした作品が展示される「日本の中のマネ―出会い、120年のイメージ」,何やらとても面白そうで興味を惹かれます。僕は以前にも板橋在住の親戚から「練馬・板橋両区の区立美術館はとても意欲的に興味深い展示を行っている」という話を聞いており,この展覧会などはまさにそうした展覧会の一つと言えそうです。練馬区立美術館,是非お邪魔してみようと思います♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪



マネは日本の美術に何をもたらしたのか。「日本の中のマネ―出会い、120年のイメージ」が練馬区立美術館で開催
https://bijutsutecho.com/magazine/news/exhibition/25932